
世界陸上代表切符に最も近い21歳の新星・柳田大輝が、日本選手権100m予選でまさかのフライング失格。5月に10秒06を叩き出し“V候補筆頭”へ躍り出た勢いは、国立のスタートラインで一瞬にして暗転した。「スタートすら切れなかった」と涙をこらえうつむく柳田。
しかし標準記録10秒00突破と世界ランキング枠はまだ残る。
失望を糧に、残り6週間で0.07秒を削り出せるか――柳田の逆襲が始まる。
現状整理 ― 日本選手権まさかのフライング失格
- 7月4日の日本選手権100m予選でフライング失格。決勝どころか準決勝にも進めず涙の初日となった
- 今季ベストは5月の国立セイコーGGPでマークした10秒06。日本勢最速タイムで9秒台目前の仕上がりを示していた
- 世界ランキングは30位(7月4日付)で出場圏内ギリギリをキープ
世界陸上(東京2025)代表選考フロー
代表枠 | 最大3人 |
---|---|
参加標準記録 | 10秒00(資格期間:2024/8/1〜2025/8/24) |
ターゲット数 | 48名(100m) |
主要日程 | 8/24 標準記録締切 → 8/27 WA最終ランキング公表 → 9/1 日本陸連第2次発表 |
ポイント
- 日本選手権3位以内+標準記録突破で即内定
- 日本選手権成績がなくても、標準記録突破か世界ランキング上位(48位以内)で代表入り可
- 日本陸連は “番号の若い基準を優先”=標準突破者が優先され、残枠をランキングで充当
柳田選手に残された2つのルート
ルート | 要件 | 現状 & ハードル |
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A: 参加標準記録10秒00突破 | 8/24までに公認レースで10秒00以内 | ベスト10秒06 → 0.07秒短縮が必要 |
B: 世界ランキング48位以内維持 | 8/27の最終公表時点で圏内 | 7/4時点30位だが、夏の欧米DL・CT参戦選手が加点 → 下落リスク大 |
ルートAが最短・最確実
- 標準突破を果たせば日本陸連優先順位①に該当し、残るは“あと2人”のイス争いのみ。
- 100m標準突破は日本人ではサニブラウンのみ(9秒96)。柳田が続けば代表枠が一気に拡大する。
ルートBは綱渡り
- ターゲット48人に収まる可能性はあるが、夏に欧米勢が10秒0台を量産すると45〜50番手ラインまで押し下げられる傾向。
- 日本国内のみで記録を出してもWAポイント上積みが小さく、海外の高グレード大会での完走がほぼ必須。
標準突破のための“勝負レース”プラン
日程 | 大会(レベル) | 追い風・高速トラックの期待度 | メモ |
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7/19 ロンドンDL | ダイヤモンドリーグ | ◎ | 夕方開催で好コンディションが多い |
7/28 SilesiaDL(ポーランド) | DL | ○ | 昨年大会で+1.6m/sの追い風実績 |
8/3 Lausanne CT Gold | CT Gold | ◎ | 海抜400m・欧州屈指の高速トラック |
8/11 国際千歳大会(JPN GP) | JAAF公認 | △ | 例年気温は高いが風が読みやすい |
8/24 日中開催可の国内最終レース | JAAF公認 | △ | 最終日に“駆け込み標準切り”を狙う選手が集中 |
海外遠征のメリット
- グレード点(DL=200pt, CT Gold=140pt)が高く、10秒15でも大きなランキング加点
- 短期遠征でも2レース以上出場すればポイント換算3大会平均を底上げ可能
ランキング維持に必要な“目安”
- 100m世界ランキングは記録点(平均3記録)+大会グレード点。
- 目安として「10秒12以内 × DL級200pt」に換算したスコアを1040点前後で3本そろえれば、最終的に45位あたりをキープしやすい。
- 失格で日本選手権分の大会点(国内選手権200pt)を失ったため、海外DLで1本補うのが最短ルート。
4×100mリレー“救済枠”の可能性
- 日本陸連要項では100m個人代表=必ずリレー登録だが、逆にリレー専属から個人枠へ“格上げ”されるケースも過去に例あり。
- リレーメンバー最終選考は8月末の合宿で行われ、50m飛び出し計測・バトン技術が加味される。
- 個人枠漏れでもリレー登録→個人参加への上積み招待が生じる場合があり、アピールはマスト。
結論 ―「標準突破」で道は開ける
- 10秒00切りが最短チケット
- 目標は“0.07秒短縮”。海外DL/CTゴールドで+1.5m/s前後の風をつかめるかがカギ。
- ランキング頼みは保険
- 夏の欧米勢の“上積みラッシュ”を考慮すると、30位は安全圏ではない。
- メンタルリセット
- 失格ショックをいかに早く切り替えられるか。東京五輪リレー銀メダル組も経験済みの“敗者復活”パターンを参考に。
あと6週間が勝負!
柳田大輝が右肩上がりの成長曲線をもう一度描き、9月の国立で日本のエーススプリンターとして疾走する姿に期待したい。