高校生で100m10秒00!清水空跳(16歳)の世界U18記録はどれほどすごいのか

高校生で100m10秒00!清水空跳(16歳)の世界U18記録はどれほどすごいのか

清水空跳選手はインターハイ男子100m決勝で驚異の10秒00をマークし、見事に優勝しました。このタイムは日本高校新記録であり、16歳の高校生による前代未聞の快挙です。

では、この「16歳で100m10秒00」という記録が世界的に見てどれほどすごいことなのか、わかりやすく解説します。

世界U18(18歳未満)記録や、同年代の記録との比較、過去の高校生スプリンターの例、さらには世界大会で通用するレベルなのかといった観点から掘り下げます。清水選手のプロフィールや将来性にも触れながら、その偉業の凄さを紐解いていきましょう。

清水空跳が16歳で樹立した「100m10秒00」の高校新記録

2025年7月26日、石川県の星稜高校2年生である清水空跳(しみず そらと)選手が、全国高校総体(インターハイ)の男子100m決勝にて10秒00(追い風1.7m)という驚異的なタイムを記録しました。この記録により、2013年に桐生祥秀選手(洛南高)が樹立した高校記録10秒01を12年ぶりに0.01秒更新し、日本高校新記録を打ち立てています。清水選手の10秒00は日本歴代5位タイに相当する快記録でもあり、現役シニア選手を含めても2025年日本シーズン最高タイムとなりました。

さらに特筆すべきは、清水選手の年齢がまだ16歳(高校2年生)である点です。

高校生が100mで10秒0台を出すのは極めて異例で、日本の陸上短距離界にとっても歴史的快挙と言えます。「10秒の壁」を高校生のうちに実質上突破した清水選手に、当の桐生選手も自身のSNSで「清水くんおめでとう!!高校記録が破られました」と祝福メッセージを送ったほどです。

それでは、この10秒00という記録が世界U18カテゴリーの記録としてどんな位置づけになるのか見てみましょう。

世界U18記録を更新?18歳未満として史上最速の快挙

清水選手がマークした10秒00というタイムは、「18歳未満(U18)の世界最高記録」を塗り替えるものとして大きな注目を集めています。従来、男子100mの世界U18最高記録は10秒06で、米国のクリスチャン・ミラー選手およびタイのプーリポン・ブーンソン選手が保持していました。

清水選手は2009年生まれで今年度は18歳未満のカテゴリーに該当するため、この10秒00は従来のU18世界最高記録10秒06を0.06秒更新する世界新記録に相当します。

一般に「世界記録」と呼ぶ場合、世界陸連(ワールドアスレティックス)が公式に認定するものを指しますが、U18(ユース)カテゴリーの100mについては世界陸連が公式記録として公認する概念は「世界U18ベスト(世界少年最高記録)」という扱いです。清水選手の記録はまさにこの世界U18ベストを塗り替える歴史的スプリントでした。

18歳未満の選手が人類史上初めて10秒0ちょうどを記録したことになり、その意味で「世界ユース新記録(世界U18新記録)」と言える偉業です。

なお、2023年には米国の高校生クリスチャン・ミラー選手17歳のときに10秒06を出して世界U18タイ記録を樹立し、その翌年4月には17歳で9秒93という驚異的なタイムもマークしています。しかしミラー選手はその年のうちに18歳へと年齢区分が上がるため、9秒台の記録は公式にはU18カテゴリーの記録として扱われません。

このように条件の違いはありますが、清水選手の10秒00は公式な年齢区分の中で見ても「18歳未満世界最速」のスプリントであることは間違いありません。

世界と日本の同年代トップ記録との比較

清水選手の10秒00が際立ってすごい理由をさらに実感するため、世界および日本における同年代(高校生世代・U18)のトップ記録と比較してみましょう。

まず世界のU18トップ記録を見てみると、2023年時点での男子100m U18世界ランキング上位は以下のようなものでした。

  • 10秒06 – プーリポン・ブーンソン(タイ)
  • 10秒06 – クリスチャン・ミラー(米国)
  • 10秒15 – アンソニー・シュワルツ(米国)
  • 10秒16 – エリヨン・ナイトン(米国)
  • 10秒32 – 桐生祥秀(日本)

このように、清水選手の10秒00はブーンソン選手やミラー選手の持つ従来最高10秒06よりも明らかに速く、世界の同年代記録を大幅に塗り替える破格のタイムです。

例えば、陸上競技が盛んなアメリカでも高校生が10秒0を切ることは稀で、2010年代にトレイボン・ブロメル選手が追い風参考で9秒台を出した例がある程度でした。それほど「高校生で10秒00」は世界的に見ても桁外れなのです。

次に日本における同年代記録との比較です。

日本の高校生男子100m記録のこれまでのトップは、桐生祥秀選手が2013年にマークした10秒01でした。清水選手は今回、この桐生選手の記録を0.01秒更新したわけですが、年齢で見れば清水選手は桐生選手より1学年若い高校2年生での達成です。桐生選手は高校3年生(17歳)で10秒01を出して世界的ニュースとなりましたが、清水選手はそれを16歳でやり遂げたことになります。

桐生選手の高校2年時最高記録は10秒19(当時のU18日本記録)でしたが、清水選手は今季6月の日本選手権で早くも10秒19を記録して桐生選手の同学年記録に並び、今回一気に0.19秒も更新しています。日本の高校生記録(U18日本記録)も一挙に塗り替えられた点で、国内の同年代比較でも頭一つ抜けた存在となりました。

他の日本人トップスプリンターの高校生時代と比べても、その突出ぶりがわかります。

桐生選手以外で高校生時に10秒2を切った日本人はおらず、サニブラウン・A・ハキーム選手でも高校3年時に10秒22が自己ベストでした(※サニブラウン選手は200mで世界ユース優勝の実績がありますが、100mで10秒1台を出したのは大学進学後です)。清水選手の10秒00は日本歴代でも山縣亮太選手(9秒95)、サニブラウン選手(9秒96)、桐生選手(9秒98)、小池祐貴選手(9秒98)に次ぐタイ記録であり、その4人はいずれも大学生〜社会人で達成したタイムです。

高校生にして日本人歴代トップ5に名を連ねた清水選手の凄さが改めて際立ちます。

高校生が10秒00を出す意味と過去の類例

一般に「100mで10秒台を出す」こと自体が一流スプリンターの基準と言われます。そんな中、高校生の年代で10秒0というタイムを出す意味は計り知れません。過去を振り返っても、同等の偉業は世界的に見ても数えるほどしかありません。

日本では先述の桐生祥秀選手が高校3年生(17歳)だった2013年に10秒01を記録し、「高校生が10秒0台」という衝撃を世間に与えました。桐生選手の場合、その後大学生となって2017年に9秒98を出し、日本人初の9秒台ランナーとなったのは記憶に新しいところです。

一方で高校時代に10秒0付近を出せた選手は他になかなかおらず、桐生選手ですら高校2年時は10秒19がベストでした。清水選手は桐生選手よりも若い段階で同等以上のタイムに到達したことで、「桐生超えの高校生」として大きな注目を浴びています。

海外に目を向けると、近年ではアメリカのクリスチャン・ミラー選手(前述)が17歳で10秒06を出し話題になりました。また、タイのプーリポン・ブーンソン選手も17歳で10秒06をマークしアジアの新星と称されています。しかし彼らも清水選手が出した10秒00には及びません。

18歳前後まで視野を広げれば、アメリカのトレイボン・ブロメル選手が高校卒業直後の18歳で9秒97(世界ジュニア記録)を出した例があります。ただし、ブロメル選手がそれを達成したのは大学1年生の時期であり、在学中の高校生ではありません。純然たる高校生が10秒00というタイムを公式大会で出す例は、世界的にも極めて稀だと言えるでしょう。

こうした過去の例と比べても、清水選手の記録がいかに「異次元」かがお分かりいただけると思います。高校生スプリンターが10秒00をマークすることは、国内外を問わず極めて珍しく、その才能が世界レベルで突出していることの証明です。

世界大会(世界陸上・五輪)レベルで見た10秒00のすごさ

清水選手の10秒00という記録は、年代別の枠を超えてシニアの世界でも通用し得るタイムです。実際、2025年に東京で開催予定の世界陸上競技選手権大会(世界選手権)100mの参加標準記録は10秒00であり、清水選手は高校生にしてその基準を満たしてしまいました。このことからも、清水選手の走りが世界大会への切符を手にできるレベルに達していることが分かります。

では、世界陸上やオリンピックの舞台で10秒00はどの程度通用するタイムなのでしょうか。

近年の例を挙げると、2019年のドーハ世界選手権では日本代表の桐生選手が10秒01のタイムで全体の17位タイ、小池祐貴選手が9秒98で14位タイという成績でした。世界のトップスプリンターが集う大会では9秒台前半~中盤がメダル争いの水準となるため、10秒00前後のタイムは決勝進出ぎりぎりのラインになります。

事実、過去の五輪・世界選手権において準決勝で敗退した選手の中で最も速かった記録は「10秒00」で、逆に言えば9秒台を出せばほぼ確実に決勝へ進めるというデータもあります。このことから、10秒00というタイムは世界大会で“あと一歩でファイナル”という実力水準といえるでしょう。16歳にしてその領域に達した清水選手の潜在力がいかに凄まじいかが分かります。

もっとも、清水選手はまだ発展途上の高校生です。将来的にスピードをさらに伸ばし、9秒台に突入できれば世界の強豪と肩を並べる日も遠くないかもしれません。現状でも日本歴代5位タイの記録ですから、日本代表リレーメンバーとしても十分戦力になるタイムです。

清水選手自身、「世界選手権の壁を乗り越えられて嬉しい」と今回の走りを振り返っており、早くも世界を意識したコメントを残しています。その言葉通り、世界大会で戦える資質を高校生にして備えている点が彼の記録の凄さと言えるでしょう。

清水空跳選手のプロフィールと将来への期待

最後に、清水空跳選手の人となりと今後の展望について簡潔にご紹介します。清水選手は2009年2月8日生まれ、石川県金沢市出身。10歳(小学4年生)のときに陸上競技を始め、家族全員が陸上経験者というスポーツ一家で育ちました。

石川県の名門・星稜高校に進学後は、持ち前の才能と努力で頭角を現します。高校1年生時の2024年には早くも100mで10秒26をマークして同学年歴代最高記録(当時)を樹立し、「サニブラウン超え」の新星として注目されました。

2025年4月にはアジアU18選手権(ウズベキスタン開催)の100mで優勝しており、これは日本人男子として初の快挙でした。7月の日本選手権ではシニア相手に健闘し、予選で10秒19を出して桐生選手の高校2年生記録に肩を並べています。

そんな清水選手ですが、実は順風満帆なだけではなく、中学時代に「重症筋無力症」という国指定の難病に襲われた経験もあります。神経と筋肉の連係に支障をきたすこの病を持ちながらも、持ち前の精神力で克服し競技に復帰したというエピソードは、多くの人に勇気を与えています。ハンデを乗り越えて培われた強靭なメンタルも、清水選手の強さの秘密と言えるでしょう。

清水選手の身長は164cmと短距離選手としては小柄ですが、その分スタートや加速の鋭さ、そして無駄のないフォームが武器です。今回の10秒00で見せた圧巻の走りは、「前半は完璧だった」と本人が語る通り序盤からトップスピードに乗る優れた加速力によるものでした。

これだけのポテンシャルを持つ清水選手に、陸上ファンからは早くも将来への期待が高まっています。本人も高校生で満足せず、これから0秒台(9秒台)を見るのが目標」と更なる飛躍を誓っています(レース後インタビューより)。

今後の展望

今後の展望として、まず直近では2025年9月開催の世界選手権(東京)出場が視野に入ります。清水選手は参加標準記録を突破しており、高校生代表が実現すれば日本短距離界に新風を吹き込むでしょう。

また、将来的には日本記録(9秒95)更新やオリンピック出場・メダル獲得といった夢も十分射程圏内です。師事する指導者の下でさらなる技術向上と筋力強化を図れば、早期に9秒台定着も期待できます。何よりまだ16歳という若さで世界のトップレベルに迫った清水選手ですから、その伸びしろは計り知れません。陸上ファンのみならず多くの人々が、清水空跳選手の今後の活躍に大きな期待を寄せています。

以上、高校生スプリンター清水空跳選手の「100m10秒00」という驚異的記録について、世界的視点からその凄さを解説しました。世界U18最高記録を更新し、日本の高校生記録を塗り替えたこの快挙は、日本のみならず世界の陸上界に新たな歴史を刻むものです。

清水選手の挑戦は始まったばかりです。この先、さらなる記録更新や世界の大舞台での活躍という嬉しいニュースが飛び込んでくる日を楽しみに、皆で応援していきましょう。