世界最高峰のアスリートたちが集う世界陸上(世界陸上競技選手権大会)は、競技だけでなくテーマソングでもファンを熱くさせてきました。
なかでも俳優の織田裕二さんは1997年から2022年までTBS中継のメインキャスターを務め、その情熱あふれる実況とともに自ら歌うテーマ曲で大会を盛り上げ、「世界陸上」の認知度向上に大きく貢献しました。織田さんの熱い応援ソングは今や大会の代名詞となり、多くのファンの心に刻まれています。
織田裕二さんは1997年から13大会連続で世界陸上のメインキャスターを担当し、“世界陸上の顔”として熱い実況でファンを魅了した。自身が歌うテーマ曲も大会には欠かせない存在に。
それでは、歴代の世界陸上テーマソングをファンの声をもとにランキング形式で振り返りましょう。織田裕二さんの楽曲に限らず、新旧の名曲を紹介しつつ、なぜ織田さんの曲がこれほど支持されているのか、その理由にも迫ります。
世界陸上 歴代テーマソング 人気ランキング
ファンのコメントやSNSの反響を参考に、印象深い歴代テーマソングをランキングにしました。ランキング表とともに各楽曲のエピソードを紹介します。
ランク | 主題歌(アーティスト) | 使用大会(開催年) |
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1位 | All my treasures(織田裕二) | 世界陸上2005ヘルシンキ大会~2022オレゴン大会 テーマ曲 |
2位 | FLY HIGH(織田裕二) | 世界陸上1997アテネ大会 エンディングテーマ |
3位 | Together(織田裕二) | 世界陸上1999セビリア大会 テーマソング |
4位 | 今、ここに君はいる(織田裕二) | 世界陸上2001エドモントン大会 テーマソング |
5位 | 生命体(星野源) | 世界陸上2023ブダペスト大会 テーマソング |
1位. All my treasures(織田裕二)~不朽の“世陸”アンセム~
堂々の第1位は、世界陸上ファンにとって永遠のテーマ曲とも言える織田裕二さんの「All my treasures」です。
織田さんが2005年ヘルシンキ大会以降、8大会連続でテーマソング(イメージソング)として歌い続けた応援歌であり、2007年大阪大会では大会公式ソングにも採用されました。大阪大会の開会式では織田さん自らフィールドで熱唱し、会場を大いに沸かせた伝説の一幕も生まれています。
ファンからの支持は圧倒的で、「織田裕二といえば世界陸上!世界陸上といえばこの曲」という声が象徴するように、この曲が流れると名場面の数々がよみがえりワクワクが止まらないと評判です。疾走感あふれるメロディと「あなたが笑ってくれる それだけが僕の All my treasures」というサビの力強い歌詞は、勝利や栄光だけでなく挑戦する全ての人へのエールとして響きます。
実際、「一秒先の未来ですら本当は誰もわからない」という歌詞が世界記録保持者ですら次はどうなるかわからない陸上競技の世界観にピッタリだという指摘もあり、ファンにとって欠かせない応援歌となりました。
織田さん本人も作詞に関わったこの曲には、長年培った陸上への愛情と情熱が込められています。世界陸上中継で楽しそうに熱弁する織田さんの姿とテーマ曲がセットで流れると「テンションが上がる」と感じるファンも多く、「All my treasures」を聴くと「地球に生まれてよかったー!」と絶叫した織田さんの熱狂まで思い出す人もいるほどです。
まさに世界陸上の魂と呼ぶに相応しい一曲でしょう。
2位. FLY HIGH(織田裕二)~世界へ羽ばたく疾走感~
第2位は、織田裕二さんが初めて世界陸上のために歌ったテーマ曲「FLY HIGH」です。
1997年アテネ大会のエンディングテーマとして起用され、織田さんの世界陸上キャスター就任とともにお披露目となりました。タイトル通り「高く羽ばたけ!」というメッセージが込められたアップテンポなロックナンバーで、織田さん自身が歌詞を手がけています。
当時、日本では男子短距離の伊東浩司選手が日本新記録を樹立するなど明るい話題もあり、大会放送のラストに流れるこの曲に元気づけられたファンも多かったようです。伸びやかなサウンドと前向きな歌詞が印象的で、「世界の舞台に挑むアスリートたちと重なり胸が熱くなった」と懐かしむ声も聞かれます。
織田裕二さんにとっても初の大会テーマソングという記念碑的な曲であり、ここから“織田裕二=世界陸上”の物語が始まったと言えるでしょう。
3位. Together(織田裕二)~一体感あふれる応援ソング~
第3位は、1999年セビリア大会のテーマソングとして制作された「Together」です。
タイトルの通り「共に」戦うことを歌ったナンバーで、織田裕二さんが作詞し仲間との絆や団結をテーマにしています。シドニー五輪目前で日本選手の活躍に期待が高まっていた時期だけに、爽やかなメロディが視聴者の胸に染みわたり、「選手と一緒に戦っている気持ちになれた」と当時を懐かしむファンもいます。
特にリズミカルなサビ部分はキャッチーで、テレビ中継で繰り返し流れたことで耳に残った人も多かったようです。「♪Together…」と繰り返すフレーズに合わせて、織田さんが興奮気味に選手へのエールを送っていた姿も印象的でした。
発売当時はCDシングルが廃盤になるほどレアだったようですが、2007年発売の「All my treasures」CDにはカップリング収録され、ファン念願の音源化となりました。一体感を生み出す応援歌として、今でも根強い人気を誇っています。
4位. 今、ここに君はいる(織田裕二)~静かな闘志と情熱を込めて~
第4位は、2001年エドモントン大会でテーマソングに起用されたバラード調の応援歌「今、ここに君はいる」です。
織田裕二さんが「目の前の舞台に立つ君(選手)が確かにここにいる」という思いを込めて自作詞した楽曲で、疾走感のある他の曲とは一味違う静かな熱さが特徴です。
この大会では日本選手も健闘し、男子ハンマー投げの室伏広治選手が惜しくもメダルに届かない4位になるなどドラマがありました。そんな中、中継で流れるこの穏やかながら力強い曲に「悔しさと次への決意を感じた」という声もあります。ピアノ主体のしっとりしたサウンドが心に染み、「勇気をもらえた」「涙が出た」と語るファンもいました。
2003年パリ大会でも「今、ここに君はいる in Paris」としてアレンジ版が使用され、2大会にわたり選手たちの背中を押した隠れた名曲です。
5位. 生命体(星野源)~新時代を彩るポップロック~
第5位には、現役人気アーティスト星野源さんが手掛けた「生命体」がランクインしました。
織田裕二さんが25年務めたメインキャスターを2022年で勇退し、迎えた2023年ブダペスト大会から新テーマ曲として採用された一曲です。星野源さんらしいポップなロックチューンで、高揚感あふれる演奏とキャッチーなメロディが特徴。【TBS『世界陸上』&アジア大会テーマソング】として書き下ろされた経緯もあり、「選手や応援する人々、さらには混沌とした時代を懸命に生きる全ての人を称賛し鼓舞できるような曲」に仕上がっています。
当初は20年ぶりのテーマ曲刷新に驚くファンもいましたが、星野源さん自身「前の方がよかったというネガティブ反応も当然あると思っていた」と語っています。実際には「新しい曲も爽やかで大会に合っている」「聞くほどに良さが沁みる」と好意的な声も多く、新時代の幕開けを感じさせました。
ただ中には「曲自体は良いけれど、やっぱり織田裕二の熱さが恋しい!」という意見もあり、長年染み付いた織田さんの存在感の大きさも改めて浮き彫りになりました。いずれにせよ「生命体」は世界陸上の新たな顔として、これから回を追うごとにファンの思い出と結びついていくことでしょう。
織田裕二のテーマ曲が愛される理由と他曲とのギャップ
ランキングを通して浮き彫りになったのは、織田裕二さんの楽曲が世界陸上ファンに特別な存在だということです。織田さんのテーマ曲は大会中継で何度も流れるうちに「この曲が流れたら世界陸上!という定番」となり、聞くだけで大会の熱狂が蘇るといいます。
織田さん自身、専門家ではない立場から誰よりも陸上を勉強し、感情むき出しの熱い言葉で競技の魅力を伝えてきました。そうした真摯さと情熱が曲にも乗り移り、視聴者と心を一つにする応援歌になったのでしょう。
一方で興味深いのは、織田裕二さんの世界陸上テーマ曲が一般的な知名度や売上では必ずしもトップではない点です。
例えば織田さん自身最大のヒット曲は、主演ドラマ『踊る大捜査線』主題歌の「Love Somebody」でオリコン最高9位・約48万枚の売上を記録しました。またデビュー当初の「歌えなかったラヴ・ソング」はオリコン2位・57万枚超えの大ヒットでした。
これらドラマやCMタイアップ曲に比べ、「All my treasures」のオリコン最高位は40位と商業的には控えめでした。実際、織田裕二さんの歌手活動は2008年以降目立ったリリースがなく、「All my treasures」も2007年発売当時の売上は大きく報じられたわけではありません。
しかしながら、「All my treasures」は陸上ファンなら誰もが知っている名曲であり「誰もが必ず一度は耳にした」曲でもあります。たとえ一般のカラオケランキングに載らなくとも、世界陸上を愛する人々にとっては国民的応援歌なのです。
「Love Somebody」が都会的なお洒落ドラマの象徴だとすれば、「All my treasures」はスタジアムで汗ほとばしる感動の象徴と言えるでしょう。そのギャップこそ、織田裕二さんというエンターテイナーの幅の広さでもあり、世界陸上というイベントの特別さでもあります。
今後、東京開催となる世界陸上2025では織田裕二さんがスペシャルアンバサダーとして復帰することが決まり、ファンの期待も高まっています。織田さんが長年紡いできたテーマ曲の legacy(レガシー)は、新テーマ「生命体」に引き継がれつつ、きっと会場やお茶の間でまたあの「織田節」が聞ける日を待ち望む声もあるでしょう。
世界陸上と音楽の熱いコラボレーションは、これからもファンの胸を打ち続けてくれるに違いありません。