織田裕二『All My Treasures』誕生秘話 – 世界陸上テーマ曲の制作背景と魅力

織田裕二さんが歌うAll My Treasuresは、TBS系世界陸上中継のテーマ曲として長年親しまれてきた名曲です。この記事では、その誕生秘話として楽曲の制作背景や織田さん本人の想い、歌詞に込められたメッセージ、世界陸上との関係、そして世間の反響や関連動画・配信情報までを詳しく解説します。

楽曲制作の背景:作詞・作曲と誕生の経緯

「All My Treasures」は2005年、織田裕二さんがメインキャスターを務めた「世界陸上2005ヘルシンキ大会」のイメージソングとして制作されました。作詞は溝下創さんと広保宣さん、作曲は溝下創さんが担当し、編曲は音楽プロデューサーのシライシ紗トリさんが手掛けています。織田さん自身はそれ以前の世界陸上テーマ曲(「FLY HIGH」や「Together」など)で作詞を担当していましたが、本曲ではプロの作家陣により制作されました。

2007年に大阪で開催された世界陸上では、開催国・日本の公式テーマソングに抜擢され、開幕約1ヶ月前の2007年7月25日にシングルCDとして初めてリリースされました。このシングルにはカップリング曲として過去の世界陸上テーマ曲3曲(「FLY HIGH」(97年アテネ大会エンディングテーマ)、「Together」(99年セビリア大会テーマソング)、「今、ここに君はいる」(01年エドモントン大会テーマ))が収録されており、織田さん自身が作詞を手掛けたこれら過去曲と併せて全5曲構成となっています。

こうした収録内容からも、「All My Treasures」が世界陸上テーマ曲の集大成として位置付けられていたことがうかがえます。

織田裕二の想いとエピソード:熱い制作姿勢

織田裕二さんは1997年のアテネ大会から25年間にわたり世界陸上中継のメインキャスターを務め、“世界陸上の顔”とも言える存在でした。自身が出演する大会のテーマ曲を歌うにあたり、その想い入れも格別であったようです。織田さんは世界陸上への情熱が非常に熱く、番組内外で誰よりも陸上を愛する姿勢を見せてきました。実際、織田さんは大会の魅力について「どんな大会を見せてくれるんだろうとワクワクしていた。想像以上にすごかったです」と興奮気味に語ったこともあり、毎回熱い気持ちで放送に臨んでいました。

2007年の大阪大会開会式では、織田さん自身が長居スタジアムのフィールド上でこの曲を熱唱しており、会場を大いに盛り上げました。このパフォーマンスは織田さんにとっても特別な経験であり、自身の歌で直接アスリートや観客を応援できる喜びを感じたとされています(大会関連のインタビューなどからもうかがえます)。

織田さんは「25年の集大成として、感謝と思いを込めて、熱く伝えていきたい」と最後の出演前にコメントを寄せており、世界陸上とこの曲に対する深い愛情と使命感を持っていたことが分かります。

歌詞のテーマ・意味:込められたメッセージ

「All My Treasures」の歌詞には、未来への希望仲間との絆が力強く描かれています。冒頭では「一秒先の未来ですら本当は誰もわからない」と歌われ、だからこそ「諦めない」「信じること」が今できる大切なことだと訴えています。これは競技の結果が予測不能な陸上競技の世界観とも重なり、最後まで希望を捨てずに挑戦する精神を象徴していると言えるでしょう。

サビでは“大切なあなた”への想いが綴られ、「あなたが笑ってくれるそれだけが僕のAll my treasures(君の笑顔こそが僕の全ての宝物)」というフレーズが印象的です。ここには支えてくれる人への感謝や、喜びを分かち合えることの尊さが込められています。特に〈子供の頃に見上げてた空は All my treasures〉という一節からは、幼い頃に抱いた夢や憧れを今も忘れず追い続けている姿勢が感じられ、初心を貫く大切さもメッセージとして読み取れます。

全体を通して、歌詞には「仲間と同じ時代に出会い、同じ夢を追える素晴らしさ」「誰かの笑顔こそが自分の宝物」といったポジティブで温かなメッセージが込められており、世界陸上で戦うアスリートやそれを応援する全ての人々の心に寄り添う応援歌となっています。

世界陸上との関係とテーマソング使用歴

「All My Treasures」は、織田裕二さんの世界陸上キャスター就任以降の大会で欠かせないテーマ曲となりました。初使用は前述のとおり2005年ヘルシンキ大会(織田さんがこの大会も引き続きMC担当)で、番組イメージソングとして起用されたのが始まりです。その後の主な使用歴は以下の通りです。

  • 2007年 大阪大会大会公式ソングに採用(開催国・日本のホスト局だったTBS制作番組で使用)。開幕1ヶ月前にシングルリリースされ、8月25日の開会式では織田さんがスタジアムで本曲を披露しました。大会期間中も番組のオープニングやハイライトで流され、視聴者の高揚感を演出しました。
  • 2009年 ベルリン大会織田さん出演のTBS中継で引き続き使用されましたが、この年のみ特別に「All My Treasures in Berlin」と副題が付けられ、イメージソングという扱いになりました。大会テーマ曲としての存在は保ちつつ、開催地名を冠したバージョンで放送を盛り上げました。
  • 2011年 テグ大会織田さんがMCを続投した中で、本曲が「All My Treasures 2011」と改題され、テーマソングとして復活。以降、正式に大会テーマ曲の座に戻り、再び番組の顔として機能します。
  • 2013年~2019年(モスクワ、北京、ロンドン、ドーハ各大会)毎回織田さんがMCを務め、本曲も一貫してテーマソングとして使用され続けました。大会ごとに年号や開催地名が付くこともなく、常に「All My Treasures」として定着し、競技中継のオープニングやエンディングで流れるたびに「世界陸上が始まる!」と感じさせる存在になっていきます。特に織田さんが情熱的に選手を迎えるシーンで本曲が流れると、「今年もこの季節が来た」と視聴者に強く印象付けました。
  • 2019年 世界リレー中継世界陸上ではありませんが、TBSが放送権を取得した世界リレー大会の中継でもテーマソングに起用されました。陸上競技全般の“応援歌”的立ち位置として、本曲の汎用性と知名度が買われた形です。
  • 2022年 オレゴン大会(ユージーン)織田裕二さん&中井美穂さんコンビによる最後の世界陸上出演となった大会であり、この大会まで連続で「All My Treasures」がテーマ曲を務め上げました。四半世紀にわたる締めくくりとして、大会最終日の放送でも織田さんは「楽しい25年をありがとうございました」と感謝を述べ、番組と共に歩んだテーマ曲にも有終の美を飾らせました。
  • 2023年 ブダペスト大会織田さんのキャスター卒業に伴い、テーマ曲も一新。シンガーソングライター星野源さんの新曲「生命体」が新テーマソングに採用され、約16年間続いた『All My Treasures』の役目はここで一区切りとなりました。こうして本曲は“レガシー(遺産)”としてその歴史的使命を終え、世界陸上は新たなテーマ曲の時代へと移行しました。

世間の反響と評価

視聴者・ファンからの反響

長年にわたり世界陸上を彩ってきた「All My Treasures」には、多くの視聴者やファンから愛着のこもった声が寄せられています。織田裕二さんの世界陸上キャスター卒業が発表された際には、SNS上でも「毎回あの曲を聴くと鳥肌が立った」「もう『All My Treasures』が聴けないなんて寂しい」といった反応が見られ、テーマ曲との別れを惜しむファンが多数いました。

実際、織田さん最後の出演年となった2022年には、お笑いコンビ・ナイツの土屋伸之さんがラジオ番組で「今年が『All My Treasures』のラストイヤーだった」と語り、相方の塙宣之さんも「あの曲は永遠に不滅ですよ」と同意しています。スタジオの観客も含め大いに盛り上がったこのエピソードは、本曲がそれだけ多くの人の心に刻まれ、夏の風物詩的な存在になっていたことを物語っています。

また、世界陸上の新テーマ曲に切り替わった直後には、「やはり『All My Treasures』じゃないと物足りない」「星野源の曲では正直ピンと来ないが、『All My Treasures』が流れたら涙が出る」といった声もネット上で散見されました。

ファンからは「織田裕二が世界陸上を卒業しても、この曲だけはレガシーとして残してほしい」という願望も聞かれ、まさにB’zの「ultra soul」が世界水泳のテーマ曲として不動の地位を築いているのと同等に、本曲を陸上界の永遠のテーマソングと評価する向きもあります。

こうした熱い支持から、本曲が単なるタイアップ曲の枠を超え、視聴者の思い出と結び付いた象徴的な楽曲になっていることが分かります。

音楽セールス・メディアでの評価

音楽作品として見ると、「All My Treasures」は織田裕二さんのシングルとしてオリコン最高40位を記録し、8週にわたりチャートインしました。トップ10入りするようなヒット曲ではなかったものの、俳優である織田さんの歌としては健闘し、何より世界陸上放送を通じて長年繰り返しオンエアされたことで国民的な認知度を獲得したと言えます。

日刊スポーツも「織田が歌う『All My Treasures』もテーマ曲として定着していた」と報じており、メディアから見ても本曲が世界陸上=織田裕二の象徴として確立されていたことが分かります。

織田さんの音楽活動全体の中でも、本曲はファンに高く評価されています。ファン投票による織田裕二さんの楽曲ランキングでも「All My Treasures」は上位にランクインしており、第3位に選ばれるなど人気の一曲です。主演ドラマ主題歌の「Love Somebody」などに次ぐ位置ではありますが、発売から年月が経った現在でも根強い支持があることが窺えます。専門の音楽評論家によるレビューは多くありませんが、スポーツと音楽の融合した応援ソングとして、本曲はテレビ音楽の名作の一つに数えられるでしょう。

関連動画・公式配信情報

公式音源や映像の配信状況についても触れておきます。「All My Treasures」はCD発売後、現在では各種音楽配信サービスでデジタル配信されています。例えばユニバーサルミュージックの公式ページでも案内がある通り、iTunes等で楽曲購入・視聴が可能です。Spotifyなどのストリーミングサービスでも織田裕二さんのアルバム『ありがとう (Digital Ver.)』(2007年)に収録されており、フルで聴くことができます(※2025年6月現在)。

一方、ミュージックビデオ(MV)に関しては、いわゆるプロモーション用の公式MVは制作・公開されていないようです。当時は織田裕二さん自身の音楽番組出演も限られていたため、テレビでフルコーラスを披露する機会も多くはありませんでした。

しかし、2007年世界陸上大阪大会の開会式での歌唱映像や、織田裕二さんのコンサート映像(同年開催のコンサートツアー「3920」で披露)などが存在し、現在ではそれらの映像の一部がYouTube上で視聴可能です。特に開会式でのパフォーマンス映像は迫力があり、スタジアムの熱気とともに曲の持つ力強さを感じることができます。

また、ファンによる編集動画として、世界陸上のハイライトシーンに「All My Treasures」を載せたものなどもアップロードされており、コメント欄には本曲への懐かしさや称賛の声が数多く寄せられています。

なお、世界陸上の公式ハイライトなどで本曲が使用された映像は現在公式には配信されていませんが、TBSの関連番組やニュース映像の中で断片的に流れることがあります。織田裕二さんご本人の公式YouTubeチャンネルは存在しないため、公式映像を見る手段は限られますが、前述のようなライブ映像やファン制作の動画を通じて、その雰囲気を味わうことができます。

まとめると、「All My Treasures」は音源自体はCD・配信で容易に入手可能であり、映像面では公式MVこそないものの、開会式やコンサートでの貴重なパフォーマンスが映像として残されています。世界陸上の名場面とともにこの曲を振り返りたい方は、そうした動画をチェックしてみると良いでしょう。織田裕二さんの熱唱とともに、当時の感動がよみがえること間違いありません。