
東京で開催される世界陸上2025の男子110mハードル は、短距離走のスピードとハードル克服の技術が融合した見応えある種目です。地元開催ということもあり、日本人選手の活躍にも大きな期待が寄せられています。本記事では、その競技ルールや大会形式から世界記録の現状、さらに東京2025大会の見どころや日本人注目選手まで、スポーツファンに向けてわかりやすく解説します。
日程は、
- 予選(ヒート): 9月15日(月・祝)20:20 開始
- 準決勝:9月16日(火)20:40 開始
- 決勝: 9月16日(火)イブニングセッション中に実施
選手たちが繰り広げる迫力と戦略に満ちた110mハードルの魅力を、一緒に紐解いていきましょう!
種目のルールと競技形式
男子110mハードルは、110メートルの直線走路上に10台のハードルが設置され、それらを跳び越えながらタイムを競う陸上トラック競技です。ハードルの高さは106.7cm(3フィート6インチ)で、これは陸上競技発祥の地・イギリス由来の単位に基づく高さです。
スタートから最初のハードルまでは13.72m、ハードル間の間隔は9.14m、最後のハードルからゴールまでは14.02m離れており、選手たちはこの限られた距離の中で助走・踏切・着地をリズミカルにこなしていきます。
各選手は8レーンのそれぞれに配置され、スターティングブロック(スタブロ)を使用してスタートします。スタートの合図はピストルによる号砲で行われ、現在のルールではフライング(不正スタート)は一発で失格となります(混成競技を除く)。合図の直前に動いてしまったり、号砲から0.1秒未満で反応して飛び出してしまうとフライングと判定されるため、選手たちは号砲の音に全神経を集中させつつも静止を保つ高度な集中力が求められます。
ハードル競走では自分のレーンのハードルを越えることが絶対条件で、他選手の妨害にならない範囲であればハードルに接触・転倒させても失格にはなりません。ただし意図的にハードルを倒したと審判に判断された場合は失格となり、ハードルを脚でまたぐ際にバーの高さより低い位置を通過することも反則です。
競技会での進行は、他の短距離種目と同様に予選→準決勝→決勝のラウンド制で行われます。世界選手権では出場選手数に応じて予選ヒートが編成され、各ヒート上位選手および記録上位者が準決勝に進出します(例:各組○着まで+タイム上位○名)。
準決勝では通常3組程度に分かれて争われ、各組上位着順+タイム上位の計8名が決勝へ駒を進めます。一日のうちに準決勝と決勝が実施されることもあり、トップ選手でも短時間でのコンディション調整と集中力維持が求められます。
東京世界陸上2025では大会中盤の9月15~16日夜に男子110mハードルの準決勝・決勝が予定されており、世界一を懸けたハイレベルな戦いが繰り広げられるでしょう。
男子110mハードル 世界記録の現状と歴史
男子110mハードルの世界記録「12秒80」を示す電光掲示板(2012年9月、ブリュッセルの大会にて)。現在、この驚異的な世界記録を保持しているのはアメリカの アリエス・メリット 選手で、2012年9月7日にベルギー・ブリュッセルで開催されたダイヤモンドリーグ最終戦で樹立されました。
メリット選手は同年ロンドン五輪金メダリストでもあり、五輪後わずか1ヶ月足らずでそれまでの世界記録を0.07秒も短縮する快挙を成し遂げました。従来の世界記録はキューバの デイロン・ロブレス 選手が2008年に記録した12秒87であり、メリット選手はこのタイムを一気に塗り替えたのです。
世界記録の変遷を振り返ると、2000年代以降に記録更新のハイライトが集中しています。
2004年アテネ五輪で中国の英雄 劉翔(リウ・シアン) 選手が当時の世界タイ記となる12秒91をマークし、続く2006年に12秒88の世界新記録を樹立。さらに2008年には前述のロブレス選手が12秒87へ更新するなど、一時は0.01秒を争う接戦で世界記録が塗り替えられました。
その流れを最終的に押し広げたのがメリット選手の12秒80で、記録更新の幅としては極めて大きなものでした。メリットの世界記録は成立から10年以上が経過していますが、2021年には米国の新星 グラント・ホロウェイ 選手が12秒81を叩き出すなど、“人類史上最速”に迫る走りも現れています。
ホロウェイ選手は世界選手権3連覇中の現役最強ハードラーであり、この東京大会でも世界記録に迫る走りを見せるのか注目が集まります。一方で、110mハードルはわずかなミスやコンディションの差でタイムが大きく変動し得る種目でもあり、未だ破られていない12秒80の壁が東京の地で崩れるかどうか、ファンにとって大きな見どころとなるでしょう。
110mハードルの魅力と観戦ポイント
男子110mハードルは、陸上短距離種目の中でもスリリングな駆け引きが堪能できる種目です。最大の魅力は、時速40km近いスプリントスピードで疾走しながら 10台のハードルをリズミカルにクリアしていく妙技にあります。
選手たちはスタート直後から約14m先の第1ハードルに向けて一気に加速し、助走の最後に踏み切って跳躍します。一般的に男子では 「8歩」で最初のハードルに到達するリズムが長らく主流でしたが、近年では選手の体格向上や加速力の進歩に伴い 「7歩」で第1ハードルに到達する選手も現れ始めました。
7歩スタートはストライド(歩幅)の大きさと高度なバランス感覚が要求されるチャレンジングな戦法ですが、成功すれば序盤の加速で他をリードできる可能性があります。観戦の際は各選手のスタートダッシュから1台目までの歩数にも注目すると、それぞれの戦略の違いが見えてくるでしょう。
ハードル間のインターバルは9.14mと短く、選手たちは3歩で次のハードルへ突入するリズムを維持します。助走で踏み切った足と反対の足(抜き足)を素早く振り上げてハードルを越え、着地と同時に再加速して次の一歩を刻む——この一連の動作を0.3〜0.4秒ほどの間隔で繰り返す必要があるため、わずかなフォーム乱れやタイミングのズレがタイムロスに直結します。
ハードルに接触するリスクも常に伴い、トップ選手でもレース終盤での僅かな疲労からハードルに脚を引っ掛けて失速したり転倒してしまうドラマも少なくありません。観客としては「選手がどのようにハードルをクリアしているか」に注目すると面白く、例えば上半身のブレを抑えてスムーズに脚をさばいている選手は後半までスピードを維持しやすい傾向があります。
また、向かい風や追い風といったコンディションも記録に影響する要素です。追い風が強すぎると記録は参考扱いになりますが(+2.0m/sを超える場合)、適度な追い風は選手のタイムを後押しします。スタジアムの風向き計の表示にも目を配りながら、「今日は記録が出やすい条件かどうか」を予想してみるのも観戦の醍醐味と言えるでしょう。
総じて、男子110mハードルは一瞬たりとも目が離せない種目です。スタートからゴールまで約13秒前後の間に、選手たちは加速・跳躍・着地・再加速を繰り返し、ゴール手前では僅差の勝負が展開されます。フィニッシュの瞬間は写真判定になるケースも多く、百分の数秒でメダルの色が分かれることもしばしばです。
ぜひ観戦時はお気に入りの選手のレーンを目で追いながら、各ハードルごとの攻防とゴール前の伸びに注目してみてください。その緊張感と迫力に、陸上ファンでなくとも思わず手に汗握ることでしょう。
日本人注目選手:メダルへの期待
東京大会でメダルや入賞を狙う日本人選手たちにも大きな期待がかかります。現在、日本男子110mハードル界で筆頭格となっているのが泉谷駿介(いずみや しゅんすけ)選手と村竹ラシッド選手です。
両者はともに日本記録となる13秒04を自己ベストに持ち、2023年シーズンに相次いでこのタイムをマークしました。
泉谷選手は2023年6月の日本選手権で自身の持つ日本記録を更新する13秒04で優勝(三連覇)し、その勢いのまま臨んだ2023年8月のブダペスト世界選手権では、日本人男子として初めて決勝に進出して5位入賞という快挙を成し遂げました。
一方の村竹選手も大学在学中から頭角を現し、2024年パリ五輪では日本勢として57年ぶりに五輪110mH決勝に進出して堂々の5位入賞(13秒21)を果たしています。
この二人はまだ20代前半と若く、着実に国際舞台で実績を積んでおり、東京世界陸上では地元の声援を受けてさらなる飛躍が期待されます。
経験豊富なベテラン勢にも注目です。高山峻野(たかやま しゅんや)選手や金井大旺(かない たいおう)選手は、日本記録が13秒台半ばだった時代から第一線で活躍し、日本ハードル界を牽引してきた存在です。高山選手は2022年に13秒10の当時日本新記録を樹立した実績を持ち、金井選手も13秒16の高速タイムで日本記録を更新した経験があります。
彼らのような安定感ある選手の存在はチーム全体に心強さを与えますし、若手にとっても良い刺激となっています。また、新星も台頭しています。2025年シーズンには大学生の阿部竜希(あべ りゅうき)選手が13秒25の好タイムをマークし、日本歴代6位タイに食い込んできました。層の厚みが増すことで国内の競争水準も高まり、日本全体のレベルアップにつながっています。
こうした日本のエースたちが東京世界陸上に挑む意義は大きいでしょう。110mハードルはこれまでオリンピック・世界選手権を通じて日本勢のメダル獲得がない種目ですが、近年の記録向上や国際大会での入賞という成果から、「いよいよ世界と肩を並べる時が来た」と感じさせるムードが漂っています。
実際、泉谷選手は2023年にダイヤモンドリーグ・ローザンヌ大会で優勝し、日本男子ハードル史上初の快挙を成し遂げました。13秒0台を連発するその走りは世界のトップ選手とも僅差で、東京大会でも表彰台を狙える位置に近づきつつあります。
村竹選手も五輪入賞という大舞台での自信を糧に、一層のタイム短縮を狙ってくるでしょう。彼らが持つ日本記録13秒04は世界記録とは約0.2秒の差ですが、地元の大声援と最高のコンディションが揃えば、その差を埋めるような劇的な走りが生まれる可能性もゼロではありません。
東京世界陸上2025 男子110mハードル徹底解説
短距離走のスピードとハードル克服の技術が融合した見応えある男子110mハードル。地元開催ということもあり、日本人選手の活躍にも大きな期待が寄せられます。競技ルールから世界記録、そして注目選手まで、この魅力的な種目を紐解きます。
■ 種目のルールと競技形式
110mハードルとは?
- 距離: 110メートル
- ハードル数: 10台
- ハードル高さ: 106.7cm
- スタート〜1台目: 13.72m
- ハードル間: 9.14m
- 最終ハードル〜ゴール: 14.02m
競技ルールと進行
- スタート: スターティングブロック使用、フライングは一発失格
- ハードル接触: 故意でなければ転倒させても失格にならない
- 反則: レーン侵害、ハードルを脚でまたぐ際にバーの下を通過
- 大会形式: 予選 → 準決勝 → 決勝 (ラウンド制)
- 東京2025: 9月15日〜16日夜に準決勝・決勝予定
■ 世界記録の現状と歴史
現在の世界記録: 12秒80
保持者: アリエス・メリット (アメリカ合衆国)
樹立日: 2012年9月7日 (ベルギー・ブリュッセル)
記録更新の歩み
2000年代以降、世界記録は激しく更新されました。
劉翔 (中国) が2006年に12秒88、デイロン・ロブレス (キューバ) が2008年に12秒87を記録。
そして、アリエス・メリットが2012年に12秒80という驚異的なタイムを叩き出し、金字塔を打ち立てました。
現役最強のハードラー、グラント・ホロウェイ (アメリカ合衆国) も2021年に12秒81を記録しており、東京の地で世界記録が更新されるか注目が集まります。
■ 魅力と観戦ポイント
スピードと技術の融合
- 時速40km近い疾走: 10台のハードルをリズミカルにクリア
- スタート〜1台目: 8歩が主流だが、7歩で挑む選手も
- ハードル間: 9.14mを3歩でクリアするリズム維持
勝負を分ける戦略と要素
- フォームの安定性: わずかなブレやズレがタイムロスに直結
- 接触リスク: 疲労やミスによるハードル接触・転倒
- 風速: 適度な追い風は記録を後押し (2.0m/s超は参考記録)
- 写真判定: ゴール前は百分の数秒を争う接戦
■ 日本人注目選手:メダルへの期待
泉谷 駿介 選手
日本記録保持者 (13秒04)
2023年世界選手権 5位入賞
日本のエース、メダル獲得の筆頭候補
村竹 ラシッド 選手
日本記録保持者 (13秒04)
2024年パリ五輪 5位入賞
国際舞台での経験豊富、更なる飛躍に期待
高山 峻野 選手
日本歴代上位 (13秒10)
経験豊富なベテラン
安定感でチームを牽引
阿部 竜希 選手
新星 (13秒25)
2025年シーズン急成長
今後の活躍に注目が集まる
彼らの活躍により、日本男子110mハードル界は「世界と肩を並べる時が来た」というムードが高まっています。 地元開催の強みを活かし、歴史的なメダル獲得を目指します。
■ まとめ:東京の地で世界の頂点に挑む
東京世界陸上2025の男子110mハードルは、スピード、技術、そしてドラマが凝縮された見どころ満載の種目です。 新国立競技場を舞台に、世界のトップアスリートたちが高速ハードル競走を繰り広げます。
世界記録更新の期待、そして地元日本のエースたちのメダルへの挑戦。 僅か13秒前後のレースに込められた選手たちの情熱と努力に、ぜひご注目ください。
東京の地で歴史が刻まれる瞬間を、お見逃しなく!
まとめ:東京の地で世界の頂点に挑む
男子110mハードルは、瞬間的なスピードと巧みなハードル捌きが光る魅力あふれる種目です。東京世界陸上2025では、新しくなった国立競技場を舞台に、この種目の世界最高峰の戦いが繰り広げられます。1991年大会以来34年ぶりの東京開催となる世界陸上で、日本のトップハードラーたちが地元観衆の前で躍動し、歴史に残る瞬間を生み出すことに期待が高まります。
世界記録保持者の存在や海外強豪勢の実力はもちろん侮れませんが、日本勢も着実に力をつけ、「世界との差」を詰めてきています。スタンドから送られる大歓声と「頑張れ!」のエールは、きっと選手たちの背中を押してくれるでしょう。
僅か13秒間ほどのレースに凝縮されたドラマは、陸上ファンのみならず見る者すべてを魅了するはずです。ぜひ大会当日は男子110mハードルに注目し、世界のトップアスリートたちの超高速ハードル競走を楽しんでください。東京の地で繰り広げられる熱戦が、陸上競技史に新たな1ページを刻む瞬間をお見逃しなく。