【2023年ブダペスト】ドナウのほとりで奏でられたスピード、パワー、そして魂の交響曲

【2023年ブダペスト】ドナウのほとりで奏でられたスピード、パワー、そして魂の交響曲

2023年8月19日から27日にかけて、陸上競技界の視線はハンガリーの首都ブダペストに注がれた 。第19回世界陸上競技選手権大会の舞台となったこの街は、単なる開催地以上の意味を持っていた。中央ヨーロッパで初めて開催されるこの最高峰の大会は、「スポーツの女王」たる陸上競技にとって新たな領域への進出を象明するものであった 。街全体が世界遺産に登録された美しい景観は、特にロード種目の選手たちにとって、歴史と文化が織りなす壮大な背景を提供した 。  

この歴史的な大会のために、ドナウ川のほとりには近代的なコロッセオ、国立陸上競技センターが新設された 。大会期間中の座席数は35,000席に拡張され、9日間のうち7つのイブニングセッションが完売するなど、連日満員の観客が熱狂的な雰囲気を作り出した 。この「雰囲気」は、単なる背景音ではなかった。ワールドアスレティックス(世界陸連)の大会後報告によると、8種目13人の選手が最終試技で自己最高記録を更新して順位を上げ、そのうち5人が金メダルを掴み取るという劇的な展開が相次いだ 。女子やり投の北口榛花が「観客の手拍子を背に」放った逆転の金メダル投擲や 、女子4x400mリレー決勝でフェムケ・ボルがオランダを優勝に導いた際の「信じられないという大歓声」は 、スタジアムの熱気が選手の極限のパフォーマンスを直接引き出したことを示唆している。ブダペストの組織委員会が作り出したこの「雰囲気効果」は、競技の質そのものを高める重要な要素となり、今後の主催都市にとっての成功モデルを提示した。  

大会は、翌年に迫ったパリ2024オリンピックの重要な前哨戦としても位置づけられていた 。新型コロナウイルスの影響で東京オリンピックが延期されたことに伴い、2022年のオレゴン大会から2年連続での開催という異例のスケジュールは、選手たちにとって調整の難しさと同時に、世界の頂点を連続で目指すまたとない機会を提供した 。  

この9日間、200を超える国と地域から集った2,100人以上のアスリートが49種目で競い合い、数々のドラマが生まれた 。本稿では、アメリカ短距離界に新たな王と女王が誕生した瞬間、ヨーロッパのスーパースターが見せた圧巻の走り、中距離種目における戦術の応酬、そして日本代表チームが遂げた歴史的な躍進まで、ブダペストで繰り広げられた熱戦の全てを詳細に振り返る。  

世界の舞台:新星の戴冠、伝説の継承、そして予測不能のドラマ

アメリカ短距離界のルネサンス:ライルズとリチャードソンが王座に就く

ウサイン・ボルト引退後の男子短距離界に、ついに絶対的な王者が誕生した。アメリカのノア・ライルズは、今大会でその名を陸上史に刻んだ。まず男子100mでは、9秒83の自己ベストで金メダルを獲得 。続いて得意の200mでは19秒52という圧倒的なタイムで他を寄せ付けず2冠を達成すると、最終盤の男子4x100mリレーではアンカーとしてアメリカチームを優勝に導き、歴史的な3冠を達成した 。そのパフォーマンスとカリスマ性で、彼は名実ともに男子スプリント界の新たな顔となった 。  

女子では、シャカリ・リチャードソンの登場が大会最大級の衝撃をもたらした。物議を醸す言動や過去の挫折から、常に注目を集めてきた彼女は、ブダペストでその才能を完全に開花させた。女子100m決勝、大外の9レーンからスタートしたリチャードソンは、爆発的な加速でシェリカ・ジャクソンやシェリー=アン・フレイザー=プライスといったジャマイカの強豪勢を置き去りにし、10秒65の大会新記録で世界の頂点に立った 。この勝利は、彼女のキャリアにおける完全な復活を意味するだけでなく、女子スプリント界に新たな時代の到来を告げるものだった。さらに彼女は200mで銅メダル、女子4x100mリレーではアンカーを務め、こちらも大会新記録での金メダル獲得に貢献し、今大会のヒロインの一人となった 。  

トラックの女王たち:キピエゴンの支配とボルの雪辱

ケニアのフェイス・キピエゴンは、今大会を通じて女子中長距離界における自身の伝説を不動のものとした。大会前のシーズンに1500m、1マイル、5000mで世界記録を樹立していた彼女は、その勢いをブダペストに持ち込んだ 。まず女子1500mを3分54秒87で制すると、数日後には女子5000mでも14分53秒88で優勝。世界選手権の歴史上、この2種目を同一大会で制した初の女子選手という前人未到の偉業を成し遂げた 。その圧倒的な強さは、彼女が史上最高の女子中距離ランナーであるという評価を決定づけるものだった。  

一方、オランダのフェムケ・ボルは、天国と地獄を味わうジェットコースターのような9日間を過ごした。大会初日の混合4x400mリレー決勝、アンカーを務めた彼女は金メダル目前のゴールライン数メートル手前で転倒し、メダルを逃すという悪夢を経験した 。しかし、この悲劇は彼女の物語の序章に過ぎなかった。数日後、本職の女子400mハードルでは51秒70の圧巻の走りで他を寄せ付けず、自身初の世界タイトルを獲得 。そして大会最終種目の女子4x400mリレー決勝、再びアンカーを任されたボルは、3位でバトンを受けると、驚異的な追い上げを見せる。最後の直線でイギリス、そしてジャマイカのアンカーを猛追し、フィニッシュライン寸前でかわしてオランダに劇的な金メダルをもたらした(3分20秒72) 。初日の悲劇から最終日の栄光へ。この完璧な雪辱の物語は、今大会で最も感動的なハイライトの一つとして語り継がれるだろう。  

フィールドの巨人たち:記録とライバルリー

フィールド種目でも数々の名勝負が繰り広げられた。男子砲丸投では、アメリカのライアン・クラウザーが脚に血栓が見つかるというアクシデントを乗り越え、23m51という驚異的な大会新記録で優勝 。男子棒高跳では、スウェーデンのアルマンド・デュプランティスが6m10をクリアし、世界選手権2連覇を達成した 。  

しかし、今大会のフィールドとトラックを合わせた中で最も劇的だったのが男子1500m決勝かもしれない。優勝候補筆頭は、向かうところ敵なしと思われたノルウェーのヤコブ・インゲブリグトセンだった 。しかし、2022年大会の悪夢が蘇る。イギリスのジョシュ・カーが完璧なレース戦略を実行。ラスト200mでインゲブリグトセンの背後からスパートをかけると、最後の直線で彼を抜き去り、3分29秒38で衝撃的な金メダルを獲得した 。レース後、喉の不調を明かしたインゲブリグトセンは2年連続の銀メダルに終わったが、数日後の5000mでは雪辱の金メダルを獲得し、王者の意地を見せた 。  

このほかにも、男子三段跳のユーグ・ファブリス・ザンゴ(ブルキナファソ)が母国に初の金メダルをもたらし、女子走幅跳のイバナ・ブレタ(セルビア)、男子走高跳のジャンマルコ・タンベリ(イタリア)らが悲願の世界タイトルを手にした 。  

これらの個々の活躍の裏には、現代陸上界の新たな潮流が見て取れる。ライルズ、キピエゴン、ボルといった選手たちは、単一の種目に特化するのではなく、複数の高負荷な種目を一つの大会でこなす「マルチイベント・スーパースター」とでも言うべき存在感を放った。ライルズの短距離3冠、キピエゴンの前例のない中距離2冠、そしてボルがリレー2種目と個人種目をこなした驚異的なスタミナは、単に「複数種目に出場した」というレベルを超えている 。これは、現代のトレーニング科学や回復技術の進歩が可能にした、アスリートの新たな進化形を示している。彼らの活躍は、「偉大なパフォーマンス」の基準を引き上げると同時に、ファンにとっては複数日にわたる魅力的な物語を提供し、陸上競技の観戦体験をより豊かなものにした。  

日本代表の歴史的快挙:黄金のブレークスルーと前例のない選手層の厚み

ブダペスト大会は、日本陸上界にとって画期的な大会となった。メダルの色や数だけでなく、その内容が日本の新たな時代の到来を告げていた。

北口榛花、最終投擲の奇跡:金色の軌跡を描いたやり

8月25日の夜、女子やり投決勝は日本陸上史に残るドラマの舞台となった 。前回大会銅メダリストの北口榛花は、5回目の試技を終えた時点で4位。メダル圏外に後退し、絶体絶命の状況で最終6回目の投擲を迎えた 。スタジアムの観客が一体となって打ち鳴らす手拍子を背に、彼女は助走に入った。放たれたやりは、美しい放物線を描いて夜空を切り裂き、65mラインを大きく越える66m73のビッグスローとなった 。この一投で、北口は一気に4位からトップに躍り出た。他の選手がこの記録を上回ることはできず、劇的な大逆転で金メダルが確定。これは、日本の女子選手としてフィールド種目史上初の世界選手権金メダルという歴史的快挙だった 。  

試合後、彼女は「今日だけは世界で一番幸せです」と涙ながらに語った 。この勝利は、2024年パリオリンピックの日本代表内定第1号という栄誉ももたらした 。  

金メダルを超えて:日本陸上、新時代の競争力

日本陸連の山崎一彦強化委員長は大会を総括し、メダル数こそ前回のオレゴン大会(4個)から2個(金1、銅1)に減少したものの、8位以内の入賞者数が過去最多の11(男子7、女子4)に達した点を高く評価した 。かつて日本は競歩、マラソン、リレーといった特定の種目にメダル獲得を依存する傾向があったが、今大会では短距離、ハードル、中距離、跳躍、投擲と、トラック&フィールドの多岐にわたる種目で入賞者を輩出。「新たなチーム構成、新たな選手層ができている証拠」として、その多様性を最大の成果として挙げた 。  

この「選手層の厚み」を象徴する活躍が随所で見られた。

  • サニブラウン・アブデル・ハキームは、男子100m決勝で10秒04を記録し6位入賞。前回大会の7位から順位を上げ、同種目における日本人過去最高位タイの快挙を成し遂げた 。  
  • 泉谷駿介は、男子110mハードルで日本人として初めて決勝に進出し、13秒19で5位入賞という歴史を切り開いた 。  
  • 三浦龍司は、男子3000m障害物で世界の強豪と渡り合い、6位入賞を果たした 。  
  • 田中希実は、女子5000m予選で14分37秒98の日本新記録を樹立して決勝に進出。決勝でも8位入賞と健闘した 。  
  • 男子4x100mリレーは、フレッシュなメンバー構成ながら決勝で5位に入った 。  

伝統の継承:川野が競歩で銅メダル

チーム全体の多様化が進む一方で、日本の伝統的な強みである競歩も存在感を示した。男子35km競歩では、川野将虎が前回大会の銀メダルに続き、今回は銅メダルを獲得 。同種目では野田明宏も6位に入賞し、女子35km競歩でも園田世玲奈が7位に入るなど、この種目における日本の層の厚さを改めて証明した 。日本陸連の分析では、男子20km競歩の結果は期待に届かなかったものの、競歩種目全体としては依然として世界のトップレベルで戦える力があることが確認された 。  

日本代表チーム メダリストおよび入賞者一覧(ブダペスト2023)

メダル選手名種目結果
北口 榛花女子やり投66.73m
川野 将虎男子35km競歩2:25:12
順位選手名/チーム種目結果
5位泉谷 駿介男子110mハードル13.19
5位日本男子4x100mリレー37.83
6位サニブラウン・A・ハキーム男子100m10.04
6位三浦 龍司男子3000m障害物8:13.70
6位野田 明宏男子35km競歩2:25:50
7位廣中 璃梨佳女子10000m31:35.12
7位園田 世玲奈女子35km競歩2:46:32
8位赤松 諒一男子走高跳2.25m
8位田中 希実女子5000m14:58.99

記録の殿堂:塗り替えられた歴史の数々

ブダペスト大会は、その質の高さを記録の面でも証明した。9日間の競技を通じて、1つの世界記録、1つのU20世界記録、7つの大会記録、11の大陸記録、そして73の各国国内記録が誕生した 。これは、トップレベルの競争がいかに激しかったかを示す客観的な証拠である。  

新たな世界基準:世界記録と大会記録

今大会で樹立された最も輝かしい記録は、以下の通りである。特にアメリカ勢が短距離種目とリレーで、ヨーロッパ勢がフィールド種目で記録を更新したことが目立つ。

ブダペペスト2023で樹立された世界記録(WR)および大会記録(CR)

種目選手名/国籍記録記録種別
混合4x400mリレーアメリカ合衆国3:08.80WR
女子100mシャカリ・リチャードソン (USA)10.65CR
女子200mシェリカ・ジャクソン (JAM)21.41CR
女子4x100mリレーアメリカ合衆国41.03CR
女子35km競歩マリア・ペレス (ESP)2:38:40CR
男子砲丸投ライアン・クラウザー (USA)23.51mCR
男子円盤投ダニエル・ストール (SWE)71.46mCR

全種目メダリスト一覧

以下に、全49種目のメダリストを網羅的に示す。これにより、大会全体の勢力図と各種目におけるトップアスリートたちの顔ぶれを一覧できる。

男子種目メダリスト一覧

種目金メダル銀メダル銅メダル
100mN. ライルズ (USA) 9.83L. テボゴ (BOT) 9.88Z. ヒューズ (GBR) 9.88
200mN. ライルズ (USA) 19.52E. ナイトン (USA) 19.75L. テボゴ (BOT) 19.81
400mA. ワトソン (JAM) 44.22M. ハドソン・スミス (GBR) 44.31Q. ホール (USA) 44.37
800mM. アロップ (CAN) 1:44.24E. ワニョンイ (KEN) 1:44.53B. パティソン (GBR) 1:44.83
1500mJ. カー (GBR) 3:29.38J. インゲブリグトセン (NOR) 3:29.65N. G. ノルドス (NOR) 3:29.68
5000mJ. インゲブリグトセン (NOR) 13:11.30M. カティル (ESP) 13:11.44J. クロップ (KEN) 13:12.28
10000mJ. チェプテゲイ (UGA) 27:51.42D. シミュ (KEN) 27:52.60S. バレガ (ETH) 27:52.72
マラソンV. キプランガット (UGA) 2:08:53M. テフェリ (ISR) 2:09:12L. ゲブレシラセ (ETH) 2:09:19
110mHG. ホロウェイ (USA) 12.96H. パーチメント (JAM) 13.07D. ロバーツ (USA) 13.09
400mHK. ワーホルム (NOR) 46.89K. マクマスター (IVB) 47.34R. ベンジャミン (USA) 47.56
3000mSCS. エル・バッカリ (MAR) 8:03.53L. ギルマ (ETH) 8:05.44A. キビウォト (KEN) 8:11.98
走高跳G. タンベリ (ITA) 2.36mJ. ハリソン (USA) 2.36mM. バルシム (QAT) 2.33m
棒高跳A. デュプランティス (SWE) 6.10mE. J. オビエナ (PHI) 6.00mC. ニルセン (USA) 5.95m / K. マルシャル (AUS) 5.95m
走幅跳M. テントグルー (GRE) 8.52mW. ピノック (JAM) 8.50mT. ゲイル (JAM) 8.27m
三段跳H. F. ザンゴ (BUR) 17.64mL. D. マルティネス (CUB) 17.41mC. ナポレス (CUB) 17.40m
砲丸投R. クラウザー (USA) 23.51mL. ファッブリ (ITA) 22.34mJ. コヴァクス (USA) 22.12m
円盤投D. ストール (SWE) 71.46mK. チェー (SLO) 70.02mM. アレクナ (LTU) 68.85m
ハンマー投E. カッツバーグ (CAN) 81.25mW. ノヴィツキ (POL) 81.02mB. ハラース (HUN) 80.82m
やり投N. チョプラ (IND) 88.17mA. ナディーム (PAK) 87.82mJ. ヴァドレフ (CZE) 86.67m
十種競技P. ルパージュ (CAN) 8909点D. ワーナー (CAN) 8804点L. ティルガ (GRN) 8681点
20km競歩Á. マルティン (ESP) 1:17:32P. カールストロム (SWE) 1:17:39C. ボンフィム (BRA) 1:17:47
35km競歩Á. マルティン (ESP) 2:24:30B. D. ピンタド (ECU) 2:24:34川野 将虎 (JPN) 2:25:12
4x100mRアメリカ合衆国 37.38イタリア 37.62ジャマイカ 37.76
4x400mRアメリカ合衆国 2:57.31フランス 2:58.45イギリス 2:58.71

女子および混合種目メダリスト一覧

種目金メダル銀メダル銅メダル
100mS. リチャードソン (USA) 10.65S. ジャクソン (JAM) 10.72S.A. フレイザー・プライス (JAM) 10.77
200mS. ジャクソン (JAM) 21.41G. トーマス (USA) 21.81S. リチャードソン (USA) 21.92
400mM. パウリノ (DOM) 48.76N. カチュマレク (POL) 49.57S. ウィリアムズ (BAR) 49.60
800mM. モラー (KEN) 1:56.03K. ホジキンソン (GBR) 1:56.34A. ムー (USA) 1:56.61
1500mF. キピエゴン (KEN) 3:54.87D. ウェルテジ (ETH) 3:55.69S. ハッサン (NED) 3:56.00
5000mF. キピエゴン (KEN) 14:53.88S. ハッサン (NED) 14:54.11B. チェベット (KEN) 14:54.33
10000mG. ツェガイ (ETH) 31:27.18L. ギデイ (ETH) 31:28.16E. タエ (ETH) 31:28.31
マラソンA. B. シャンクレ (ETH) 2:24:23G. G. スラネス (ETH) 2:24:34F. ガルデ (MAR) 2:25:17
100mHD. ウィリアムズ (JAM) 12.43J. カマチョ・クイン (PUR) 12.44K. ハリソン (USA) 12.46
400mHF. ボル (NED) 51.70S. リトル (USA) 52.80R. クレイトン (JAM) 52.81
3000mSCW. M. ヤビ (BRN) 8:54.29B. チェプコエチ (KEN) 8:58.98F. チェロティチ (KEN) 9:00.69
走高跳Y. マフチフ (UKR) 2.01mE. パターソン (AUS) 1.99mN. オリスラガーズ (AUS) 1.99m
棒高跳K. ムーン (USA) 4.90m / N. ケネディ (AUS) 4.90mW. ムルト (FIN) 4.80m
走幅跳I. ブレタ (SRB) 7.14mT. デイビス・ウッドホール (USA) 6.91mA. イピネ (ROU) 6.88m
三段跳Y. ロハス (VEN) 15.08mM. ベフ・ロマンチュク (UKR) 15.00mL. ペレス・エルナンデス (CUB) 14.96m
砲丸投C. イーレイ (USA) 20.43mS. ミットン (CAN) 20.08m鞏 立姣 (CHN) 19.69m
円盤投L. ペレス (USA) 69.49mV. オールマン (USA) 69.23m馮 彬 (CHN) 68.20m
ハンマー投C. ロジャース (CAN) 77.22mJ. カッサナボイド (USA) 76.36mD. プライス (USA) 75.41m
やり投北口 榛花 (JPN) 66.73mF. D. ルイス・フルタド (COL) 65.47mM. リトル (AUS) 63.38m
七種競技K. ジョンソン・トンプソン (GBR) 6740点A. ホール (USA) 6720点A. フェッター (NED) 6677点
20km競歩M. ペレス (ESP) 1:26:51J. モンタグ (AUS) 1:27:16A. パルミザノ (ITA) 1:27:26
35km競歩M. ペレス (ESP) 2:38:40K. G. レオン (PER) 2:40:52A. ドラゴタ (GRE) 2:43:22
4x100mRアメリカ合衆国 41.03ジャマイカ 41.21イギリス 41.97
4x400mRオランダ 3:20.72ジャマイカ 3:20.88イギリス 3:21.04
混合4x400mRアメリカ合衆国 3:08.80イギリス 3:11.06チェコ 3:11.98

結論:ブダペストからパリ、そして東京へ続く道

ブダペスト2023世界陸上競技選手権大会は、単なる記録とメダルの祭典ではなかった。それは、ライルズとリチャードソンという新たなスターの戴冠式であり、キピエゴンとボルのような偉大なチャンピオンの伝説を確固たるものにする舞台であり、カーとインゲブリグトセンの対決のような記憶に残るライバルリーが生まれた場所であり、そして何よりも日本陸上界が新たな次元へと飛躍を遂げた歴史的な転換点であった。

大会そのものも大成功を収めた。ニールセン社の調査によれば、観客満足度は極めて高く 、オレゴン大会の15万人から40万4000人へと大幅に増加した観客動員数は、陸上競技への関心の高まりを示している 。さらに、来場者の83%が「この大会をきっかけに、より陸上競技を観戦するようになる」と回答したことは 、ブダペスト大会がスポーツの未来への投資としても機能したことを証明している。  

今大会で繰り広げられた数々のドラマは、そのままパリ2024オリンピックの展望へと直結する。ブダペストで確立されたライバル関係、誕生したニューヒーロー、そして絶対的な強さを見せつけた王者たちが、1年後のパリで再び世界の頂点をかけて激突する。

そして、その道は2025年の東京へと続いている 。ブダペストでの歴史的快挙によって得た大きな自信と勢いを胸に、日本代表チームは34年ぶりとなる自国開催の世界選手権に臨む。特に、現役の世界女王として母国のファンの前に立つ北口榛花の存在は、日本中を熱狂させるだろう。ブダペストの熱狂は、次なる舞台への期待感を最高潮に高め、女王の物語は東京で新たな章を迎える。  

付録:日本代表選手 全成績一覧

ブダペスト2023における日本代表選手の全成績

男子

選手名種目ラウンド結果最終順位
サニブラウン・A・ハキーム100m決勝10.04 (0.0)6位
準決勝9.97 (+0.3)
予選10.07 (−0.4)
坂井 隆一郎100m予選10.22 (−0.4)30位
栁田 大輝100m準決勝10.14 (0.0)22位
予選10.20 (−0.1)
鵜澤 飛羽200m準決勝20.33 (−0.4)15位
予選20.34 (−0.2)
上山 紘輝200m予選20.66 (−0.2)33位
飯塚 翔太200m準決勝20.54 (−0.1)21位
予選20.27 (0.0)
佐藤 拳太郎400m準決勝44.9914位
予選44.77 (日本新)
中島 佑気ジョセフ400m準決勝45.0410位
予選45.15
佐藤 風雅400m準決勝44.889位
予選44.97
塩尻 和也5000m予選13:51.0035位
遠藤 日向5000m予選13:50.4934位
田澤 廉10000m決勝28:25.8515位
泉谷 駿介110mH決勝13.19 (0.0)5位
準決勝13.16 (−0.2)
予選13.33 (+0.5)
高山 峻野110mH準決勝13.34 (−0.1)15位
予選13.35 (−0.9)
横地 大雅110mH準決勝14.93 (−0.2)24位
予選14.39 (0.0)
児玉 悠作400mH予選50.1835位
黒川 和樹400mH準決勝48.5811位
予選48.71
岸本 鷹幸400mH予選50.9039位
三浦 龍司3000mSC決勝8:13.706位
予選8:18.73
青木 涼真3000mSC決勝8:24.7714位
予選8:20.54
砂田 晟弥3000mSC予選8:38.5933位
柄澤 智哉棒高跳予選NM
赤松 諒一走高跳決勝2.25m8位
予選2.28m
真野 友博走高跳予選2.18m31位
長谷川 直人走高跳予選2.25m18位
橋岡 優輝走幅跳予選7.94m (−0.2)17位
城山 正太郎走幅跳予選7.46m (−0.8)32位
吉田 弘道走幅跳予選7.60m (+1.2)28位
池畠 旭佳瑠三段跳予選16.40m (−0.1)19位
ディーン 元気やり投予選79.21m14位
﨑山 雄太やり投予選NM
小椋 健司やり投予選76.65m22位
丸山 優真十種競技決勝7844点 (自己新)15位
古賀 友太20km競歩決勝1:19:0212位
池田 向希20km競歩決勝1:19:4415位
高橋 英輝20km競歩決勝1:20:2521位
山西 利和20km競歩決勝1:21:3924位
川野 将虎35km競歩決勝2:25:123位
野田 明宏35km競歩決勝2:25:506位
丸尾 知司35km競歩決勝2:29:5213位
山下 一貴マラソン決勝2:11:1912位
其田 健也マラソン決勝2:16:4035位
西山 和弥マラソン決勝2:17:4142位
日本チーム4x100mR決勝37.835位
予選37.71
日本チーム4x400mR予選3:00.3910位

Google スプレッドシートにエクスポート

女子

選手名種目ラウンド結果最終順位
君嶋 愛梨沙100m予選11.73 (+0.2)48位
鶴田 玲美200m予選23.49 (−0.3)37位
田中 希実1500m準決勝4:06.7124位
予選4:04.36
後藤 夢1500m予選4:10.2247位
田中 希実5000m決勝14:58.998位
予選14:37.98 (日本新)
廣中 璃梨佳5000m予選15:11.1622位
山本 有真5000m予選16:05.5738位
廣中 璃梨佳10000m決勝31:35.127位
五島 莉乃10000m決勝33:20.3820位
田中 佑美100mH予選13.12 (+0.4)33位
寺田 明日香100mH予選13.15 (+0.1)34位
青木 益未100mH予選13.26 (+0.1)38位
山本 亜美400mH予選57.7637位
宇都宮 絵莉400mH予選57.9838位
秦 澄美鈴走幅跳予選6.41m (−0.8)23位
森本 麻里子三段跳予選13.64m (−0.3)26位
髙島 真織子三段跳予選13.34m (−0.3)34位
北口 榛花やり投決勝66.73m1位
予選63.27m
斉藤 真理菜やり投予選58.95m15位
上田 百寧やり投予選56.19m21位
齋藤 真希円盤投予選53.20m36位
藤井 菜々子20km競歩決勝1:30:1014位
柳井 綾音20km競歩決勝1:34:5930位
梅野 倖子20km競歩決勝1:36:5235位
園田 世玲奈35km競歩決勝2:46:327位
渕瀬 真寿美35km競歩決勝2:52:5714位
岡田 久美子35km競歩決勝DNS
松田 瑞生マラソン決勝2:29:1513位
加世田 梨花マラソン決勝2:31:5319位
佐藤 早也伽マラソン決勝2:31:5720位