
2023年8月19日から27日にかけて、陸上競技界の視線はハンガリーの首都ブダペストに注がれた 。第19回世界陸上競技選手権大会の舞台となったこの街は、単なる開催地以上の意味を持っていた。中央ヨーロッパで初めて開催されるこの最高峰の大会は、「スポーツの女王」たる陸上競技にとって新たな領域への進出を象明するものであった 。街全体が世界遺産に登録された美しい景観は、特にロード種目の選手たちにとって、歴史と文化が織りなす壮大な背景を提供した 。
この歴史的な大会のために、ドナウ川のほとりには近代的なコロッセオ、国立陸上競技センターが新設された 。大会期間中の座席数は35,000席に拡張され、9日間のうち7つのイブニングセッションが完売するなど、連日満員の観客が熱狂的な雰囲気を作り出した 。この「雰囲気」は、単なる背景音ではなかった。ワールドアスレティックス(世界陸連)の大会後報告によると、8種目13人の選手が最終試技で自己最高記録を更新して順位を上げ、そのうち5人が金メダルを掴み取るという劇的な展開が相次いだ 。女子やり投の北口榛花が「観客の手拍子を背に」放った逆転の金メダル投擲や 、女子4x400mリレー決勝でフェムケ・ボルがオランダを優勝に導いた際の「信じられないという大歓声」は 、スタジアムの熱気が選手の極限のパフォーマンスを直接引き出したことを示唆している。ブダペストの組織委員会が作り出したこの「雰囲気効果」は、競技の質そのものを高める重要な要素となり、今後の主催都市にとっての成功モデルを提示した。
大会は、翌年に迫ったパリ2024オリンピックの重要な前哨戦としても位置づけられていた 。新型コロナウイルスの影響で東京オリンピックが延期されたことに伴い、2022年のオレゴン大会から2年連続での開催という異例のスケジュールは、選手たちにとって調整の難しさと同時に、世界の頂点を連続で目指すまたとない機会を提供した 。
この9日間、200を超える国と地域から集った2,100人以上のアスリートが49種目で競い合い、数々のドラマが生まれた 。本稿では、アメリカ短距離界に新たな王と女王が誕生した瞬間、ヨーロッパのスーパースターが見せた圧巻の走り、中距離種目における戦術の応酬、そして日本代表チームが遂げた歴史的な躍進まで、ブダペストで繰り広げられた熱戦の全てを詳細に振り返る。
世界の舞台:新星の戴冠、伝説の継承、そして予測不能のドラマ
アメリカ短距離界のルネサンス:ライルズとリチャードソンが王座に就く
ウサイン・ボルト引退後の男子短距離界に、ついに絶対的な王者が誕生した。アメリカのノア・ライルズは、今大会でその名を陸上史に刻んだ。まず男子100mでは、9秒83の自己ベストで金メダルを獲得 。続いて得意の200mでは19秒52という圧倒的なタイムで他を寄せ付けず2冠を達成すると、最終盤の男子4x100mリレーではアンカーとしてアメリカチームを優勝に導き、歴史的な3冠を達成した 。そのパフォーマンスとカリスマ性で、彼は名実ともに男子スプリント界の新たな顔となった 。
女子では、シャカリ・リチャードソンの登場が大会最大級の衝撃をもたらした。物議を醸す言動や過去の挫折から、常に注目を集めてきた彼女は、ブダペストでその才能を完全に開花させた。女子100m決勝、大外の9レーンからスタートしたリチャードソンは、爆発的な加速でシェリカ・ジャクソンやシェリー=アン・フレイザー=プライスといったジャマイカの強豪勢を置き去りにし、10秒65の大会新記録で世界の頂点に立った 。この勝利は、彼女のキャリアにおける完全な復活を意味するだけでなく、女子スプリント界に新たな時代の到来を告げるものだった。さらに彼女は200mで銅メダル、女子4x100mリレーではアンカーを務め、こちらも大会新記録での金メダル獲得に貢献し、今大会のヒロインの一人となった 。
トラックの女王たち:キピエゴンの支配とボルの雪辱
ケニアのフェイス・キピエゴンは、今大会を通じて女子中長距離界における自身の伝説を不動のものとした。大会前のシーズンに1500m、1マイル、5000mで世界記録を樹立していた彼女は、その勢いをブダペストに持ち込んだ 。まず女子1500mを3分54秒87で制すると、数日後には女子5000mでも14分53秒88で優勝。世界選手権の歴史上、この2種目を同一大会で制した初の女子選手という前人未到の偉業を成し遂げた 。その圧倒的な強さは、彼女が史上最高の女子中距離ランナーであるという評価を決定づけるものだった。
一方、オランダのフェムケ・ボルは、天国と地獄を味わうジェットコースターのような9日間を過ごした。大会初日の混合4x400mリレー決勝、アンカーを務めた彼女は金メダル目前のゴールライン数メートル手前で転倒し、メダルを逃すという悪夢を経験した 。しかし、この悲劇は彼女の物語の序章に過ぎなかった。数日後、本職の女子400mハードルでは51秒70の圧巻の走りで他を寄せ付けず、自身初の世界タイトルを獲得 。そして大会最終種目の女子4x400mリレー決勝、再びアンカーを任されたボルは、3位でバトンを受けると、驚異的な追い上げを見せる。最後の直線でイギリス、そしてジャマイカのアンカーを猛追し、フィニッシュライン寸前でかわしてオランダに劇的な金メダルをもたらした(3分20秒72) 。初日の悲劇から最終日の栄光へ。この完璧な雪辱の物語は、今大会で最も感動的なハイライトの一つとして語り継がれるだろう。
フィールドの巨人たち:記録とライバルリー
フィールド種目でも数々の名勝負が繰り広げられた。男子砲丸投では、アメリカのライアン・クラウザーが脚に血栓が見つかるというアクシデントを乗り越え、23m51という驚異的な大会新記録で優勝 。男子棒高跳では、スウェーデンのアルマンド・デュプランティスが6m10をクリアし、世界選手権2連覇を達成した 。
しかし、今大会のフィールドとトラックを合わせた中で最も劇的だったのが男子1500m決勝かもしれない。優勝候補筆頭は、向かうところ敵なしと思われたノルウェーのヤコブ・インゲブリグトセンだった 。しかし、2022年大会の悪夢が蘇る。イギリスのジョシュ・カーが完璧なレース戦略を実行。ラスト200mでインゲブリグトセンの背後からスパートをかけると、最後の直線で彼を抜き去り、3分29秒38で衝撃的な金メダルを獲得した 。レース後、喉の不調を明かしたインゲブリグトセンは2年連続の銀メダルに終わったが、数日後の5000mでは雪辱の金メダルを獲得し、王者の意地を見せた 。
このほかにも、男子三段跳のユーグ・ファブリス・ザンゴ(ブルキナファソ)が母国に初の金メダルをもたらし、女子走幅跳のイバナ・ブレタ(セルビア)、男子走高跳のジャンマルコ・タンベリ(イタリア)らが悲願の世界タイトルを手にした 。
これらの個々の活躍の裏には、現代陸上界の新たな潮流が見て取れる。ライルズ、キピエゴン、ボルといった選手たちは、単一の種目に特化するのではなく、複数の高負荷な種目を一つの大会でこなす「マルチイベント・スーパースター」とでも言うべき存在感を放った。ライルズの短距離3冠、キピエゴンの前例のない中距離2冠、そしてボルがリレー2種目と個人種目をこなした驚異的なスタミナは、単に「複数種目に出場した」というレベルを超えている 。これは、現代のトレーニング科学や回復技術の進歩が可能にした、アスリートの新たな進化形を示している。彼らの活躍は、「偉大なパフォーマンス」の基準を引き上げると同時に、ファンにとっては複数日にわたる魅力的な物語を提供し、陸上競技の観戦体験をより豊かなものにした。
日本代表の歴史的快挙:黄金のブレークスルーと前例のない選手層の厚み
ブダペスト大会は、日本陸上界にとって画期的な大会となった。メダルの色や数だけでなく、その内容が日本の新たな時代の到来を告げていた。
北口榛花、最終投擲の奇跡:金色の軌跡を描いたやり
8月25日の夜、女子やり投決勝は日本陸上史に残るドラマの舞台となった 。前回大会銅メダリストの北口榛花は、5回目の試技を終えた時点で4位。メダル圏外に後退し、絶体絶命の状況で最終6回目の投擲を迎えた 。スタジアムの観客が一体となって打ち鳴らす手拍子を背に、彼女は助走に入った。放たれたやりは、美しい放物線を描いて夜空を切り裂き、65mラインを大きく越える66m73のビッグスローとなった 。この一投で、北口は一気に4位からトップに躍り出た。他の選手がこの記録を上回ることはできず、劇的な大逆転で金メダルが確定。これは、日本の女子選手としてフィールド種目史上初の世界選手権金メダルという歴史的快挙だった 。
試合後、彼女は「今日だけは世界で一番幸せです」と涙ながらに語った 。この勝利は、2024年パリオリンピックの日本代表内定第1号という栄誉ももたらした 。
金メダルを超えて:日本陸上、新時代の競争力
日本陸連の山崎一彦強化委員長は大会を総括し、メダル数こそ前回のオレゴン大会(4個)から2個(金1、銅1)に減少したものの、8位以内の入賞者数が過去最多の11(男子7、女子4)に達した点を高く評価した 。かつて日本は競歩、マラソン、リレーといった特定の種目にメダル獲得を依存する傾向があったが、今大会では短距離、ハードル、中距離、跳躍、投擲と、トラック&フィールドの多岐にわたる種目で入賞者を輩出。「新たなチーム構成、新たな選手層ができている証拠」として、その多様性を最大の成果として挙げた 。
この「選手層の厚み」を象徴する活躍が随所で見られた。
- サニブラウン・アブデル・ハキームは、男子100m決勝で10秒04を記録し6位入賞。前回大会の7位から順位を上げ、同種目における日本人過去最高位タイの快挙を成し遂げた 。
- 泉谷駿介は、男子110mハードルで日本人として初めて決勝に進出し、13秒19で5位入賞という歴史を切り開いた 。
- 三浦龍司は、男子3000m障害物で世界の強豪と渡り合い、6位入賞を果たした 。
- 田中希実は、女子5000m予選で14分37秒98の日本新記録を樹立して決勝に進出。決勝でも8位入賞と健闘した 。
- 男子4x100mリレーは、フレッシュなメンバー構成ながら決勝で5位に入った 。
伝統の継承:川野が競歩で銅メダル
チーム全体の多様化が進む一方で、日本の伝統的な強みである競歩も存在感を示した。男子35km競歩では、川野将虎が前回大会の銀メダルに続き、今回は銅メダルを獲得 。同種目では野田明宏も6位に入賞し、女子35km競歩でも園田世玲奈が7位に入るなど、この種目における日本の層の厚さを改めて証明した 。日本陸連の分析では、男子20km競歩の結果は期待に届かなかったものの、競歩種目全体としては依然として世界のトップレベルで戦える力があることが確認された 。
日本代表チーム メダリストおよび入賞者一覧(ブダペスト2023)
メダル | 選手名 | 種目 | 結果 |
金 | 北口 榛花 | 女子やり投 | 66.73m |
銅 | 川野 将虎 | 男子35km競歩 | 2:25:12 |
順位 | 選手名/チーム | 種目 | 結果 |
5位 | 泉谷 駿介 | 男子110mハードル | 13.19 |
5位 | 日本 | 男子4x100mリレー | 37.83 |
6位 | サニブラウン・A・ハキーム | 男子100m | 10.04 |
6位 | 三浦 龍司 | 男子3000m障害物 | 8:13.70 |
6位 | 野田 明宏 | 男子35km競歩 | 2:25:50 |
7位 | 廣中 璃梨佳 | 女子10000m | 31:35.12 |
7位 | 園田 世玲奈 | 女子35km競歩 | 2:46:32 |
8位 | 赤松 諒一 | 男子走高跳 | 2.25m |
8位 | 田中 希実 | 女子5000m | 14:58.99 |
記録の殿堂:塗り替えられた歴史の数々
ブダペスト大会は、その質の高さを記録の面でも証明した。9日間の競技を通じて、1つの世界記録、1つのU20世界記録、7つの大会記録、11の大陸記録、そして73の各国国内記録が誕生した 。これは、トップレベルの競争がいかに激しかったかを示す客観的な証拠である。
新たな世界基準:世界記録と大会記録
今大会で樹立された最も輝かしい記録は、以下の通りである。特にアメリカ勢が短距離種目とリレーで、ヨーロッパ勢がフィールド種目で記録を更新したことが目立つ。
ブダペペスト2023で樹立された世界記録(WR)および大会記録(CR)
種目 | 選手名/国籍 | 記録 | 記録種別 |
混合4x400mリレー | アメリカ合衆国 | 3:08.80 | WR |
女子100m | シャカリ・リチャードソン (USA) | 10.65 | CR |
女子200m | シェリカ・ジャクソン (JAM) | 21.41 | CR |
女子4x100mリレー | アメリカ合衆国 | 41.03 | CR |
女子35km競歩 | マリア・ペレス (ESP) | 2:38:40 | CR |
男子砲丸投 | ライアン・クラウザー (USA) | 23.51m | CR |
男子円盤投 | ダニエル・ストール (SWE) | 71.46m | CR |
全種目メダリスト一覧
以下に、全49種目のメダリストを網羅的に示す。これにより、大会全体の勢力図と各種目におけるトップアスリートたちの顔ぶれを一覧できる。
男子種目メダリスト一覧
種目 | 金メダル | 銀メダル | 銅メダル |
100m | N. ライルズ (USA) 9.83 | L. テボゴ (BOT) 9.88 | Z. ヒューズ (GBR) 9.88 |
200m | N. ライルズ (USA) 19.52 | E. ナイトン (USA) 19.75 | L. テボゴ (BOT) 19.81 |
400m | A. ワトソン (JAM) 44.22 | M. ハドソン・スミス (GBR) 44.31 | Q. ホール (USA) 44.37 |
800m | M. アロップ (CAN) 1:44.24 | E. ワニョンイ (KEN) 1:44.53 | B. パティソン (GBR) 1:44.83 |
1500m | J. カー (GBR) 3:29.38 | J. インゲブリグトセン (NOR) 3:29.65 | N. G. ノルドス (NOR) 3:29.68 |
5000m | J. インゲブリグトセン (NOR) 13:11.30 | M. カティル (ESP) 13:11.44 | J. クロップ (KEN) 13:12.28 |
10000m | J. チェプテゲイ (UGA) 27:51.42 | D. シミュ (KEN) 27:52.60 | S. バレガ (ETH) 27:52.72 |
マラソン | V. キプランガット (UGA) 2:08:53 | M. テフェリ (ISR) 2:09:12 | L. ゲブレシラセ (ETH) 2:09:19 |
110mH | G. ホロウェイ (USA) 12.96 | H. パーチメント (JAM) 13.07 | D. ロバーツ (USA) 13.09 |
400mH | K. ワーホルム (NOR) 46.89 | K. マクマスター (IVB) 47.34 | R. ベンジャミン (USA) 47.56 |
3000mSC | S. エル・バッカリ (MAR) 8:03.53 | L. ギルマ (ETH) 8:05.44 | A. キビウォト (KEN) 8:11.98 |
走高跳 | G. タンベリ (ITA) 2.36m | J. ハリソン (USA) 2.36m | M. バルシム (QAT) 2.33m |
棒高跳 | A. デュプランティス (SWE) 6.10m | E. J. オビエナ (PHI) 6.00m | C. ニルセン (USA) 5.95m / K. マルシャル (AUS) 5.95m |
走幅跳 | M. テントグルー (GRE) 8.52m | W. ピノック (JAM) 8.50m | T. ゲイル (JAM) 8.27m |
三段跳 | H. F. ザンゴ (BUR) 17.64m | L. D. マルティネス (CUB) 17.41m | C. ナポレス (CUB) 17.40m |
砲丸投 | R. クラウザー (USA) 23.51m | L. ファッブリ (ITA) 22.34m | J. コヴァクス (USA) 22.12m |
円盤投 | D. ストール (SWE) 71.46m | K. チェー (SLO) 70.02m | M. アレクナ (LTU) 68.85m |
ハンマー投 | E. カッツバーグ (CAN) 81.25m | W. ノヴィツキ (POL) 81.02m | B. ハラース (HUN) 80.82m |
やり投 | N. チョプラ (IND) 88.17m | A. ナディーム (PAK) 87.82m | J. ヴァドレフ (CZE) 86.67m |
十種競技 | P. ルパージュ (CAN) 8909点 | D. ワーナー (CAN) 8804点 | L. ティルガ (GRN) 8681点 |
20km競歩 | Á. マルティン (ESP) 1:17:32 | P. カールストロム (SWE) 1:17:39 | C. ボンフィム (BRA) 1:17:47 |
35km競歩 | Á. マルティン (ESP) 2:24:30 | B. D. ピンタド (ECU) 2:24:34 | 川野 将虎 (JPN) 2:25:12 |
4x100mR | アメリカ合衆国 37.38 | イタリア 37.62 | ジャマイカ 37.76 |
4x400mR | アメリカ合衆国 2:57.31 | フランス 2:58.45 | イギリス 2:58.71 |
女子および混合種目メダリスト一覧
種目 | 金メダル | 銀メダル | 銅メダル |
100m | S. リチャードソン (USA) 10.65 | S. ジャクソン (JAM) 10.72 | S.A. フレイザー・プライス (JAM) 10.77 |
200m | S. ジャクソン (JAM) 21.41 | G. トーマス (USA) 21.81 | S. リチャードソン (USA) 21.92 |
400m | M. パウリノ (DOM) 48.76 | N. カチュマレク (POL) 49.57 | S. ウィリアムズ (BAR) 49.60 |
800m | M. モラー (KEN) 1:56.03 | K. ホジキンソン (GBR) 1:56.34 | A. ムー (USA) 1:56.61 |
1500m | F. キピエゴン (KEN) 3:54.87 | D. ウェルテジ (ETH) 3:55.69 | S. ハッサン (NED) 3:56.00 |
5000m | F. キピエゴン (KEN) 14:53.88 | S. ハッサン (NED) 14:54.11 | B. チェベット (KEN) 14:54.33 |
10000m | G. ツェガイ (ETH) 31:27.18 | L. ギデイ (ETH) 31:28.16 | E. タエ (ETH) 31:28.31 |
マラソン | A. B. シャンクレ (ETH) 2:24:23 | G. G. スラネス (ETH) 2:24:34 | F. ガルデ (MAR) 2:25:17 |
100mH | D. ウィリアムズ (JAM) 12.43 | J. カマチョ・クイン (PUR) 12.44 | K. ハリソン (USA) 12.46 |
400mH | F. ボル (NED) 51.70 | S. リトル (USA) 52.80 | R. クレイトン (JAM) 52.81 |
3000mSC | W. M. ヤビ (BRN) 8:54.29 | B. チェプコエチ (KEN) 8:58.98 | F. チェロティチ (KEN) 9:00.69 |
走高跳 | Y. マフチフ (UKR) 2.01m | E. パターソン (AUS) 1.99m | N. オリスラガーズ (AUS) 1.99m |
棒高跳 | K. ムーン (USA) 4.90m / N. ケネディ (AUS) 4.90m | – | W. ムルト (FIN) 4.80m |
走幅跳 | I. ブレタ (SRB) 7.14m | T. デイビス・ウッドホール (USA) 6.91m | A. イピネ (ROU) 6.88m |
三段跳 | Y. ロハス (VEN) 15.08m | M. ベフ・ロマンチュク (UKR) 15.00m | L. ペレス・エルナンデス (CUB) 14.96m |
砲丸投 | C. イーレイ (USA) 20.43m | S. ミットン (CAN) 20.08m | 鞏 立姣 (CHN) 19.69m |
円盤投 | L. ペレス (USA) 69.49m | V. オールマン (USA) 69.23m | 馮 彬 (CHN) 68.20m |
ハンマー投 | C. ロジャース (CAN) 77.22m | J. カッサナボイド (USA) 76.36m | D. プライス (USA) 75.41m |
やり投 | 北口 榛花 (JPN) 66.73m | F. D. ルイス・フルタド (COL) 65.47m | M. リトル (AUS) 63.38m |
七種競技 | K. ジョンソン・トンプソン (GBR) 6740点 | A. ホール (USA) 6720点 | A. フェッター (NED) 6677点 |
20km競歩 | M. ペレス (ESP) 1:26:51 | J. モンタグ (AUS) 1:27:16 | A. パルミザノ (ITA) 1:27:26 |
35km競歩 | M. ペレス (ESP) 2:38:40 | K. G. レオン (PER) 2:40:52 | A. ドラゴタ (GRE) 2:43:22 |
4x100mR | アメリカ合衆国 41.03 | ジャマイカ 41.21 | イギリス 41.97 |
4x400mR | オランダ 3:20.72 | ジャマイカ 3:20.88 | イギリス 3:21.04 |
混合4x400mR | アメリカ合衆国 3:08.80 | イギリス 3:11.06 | チェコ 3:11.98 |
結論:ブダペストからパリ、そして東京へ続く道
ブダペスト2023世界陸上競技選手権大会は、単なる記録とメダルの祭典ではなかった。それは、ライルズとリチャードソンという新たなスターの戴冠式であり、キピエゴンとボルのような偉大なチャンピオンの伝説を確固たるものにする舞台であり、カーとインゲブリグトセンの対決のような記憶に残るライバルリーが生まれた場所であり、そして何よりも日本陸上界が新たな次元へと飛躍を遂げた歴史的な転換点であった。
大会そのものも大成功を収めた。ニールセン社の調査によれば、観客満足度は極めて高く 、オレゴン大会の15万人から40万4000人へと大幅に増加した観客動員数は、陸上競技への関心の高まりを示している 。さらに、来場者の83%が「この大会をきっかけに、より陸上競技を観戦するようになる」と回答したことは 、ブダペスト大会がスポーツの未来への投資としても機能したことを証明している。
今大会で繰り広げられた数々のドラマは、そのままパリ2024オリンピックの展望へと直結する。ブダペストで確立されたライバル関係、誕生したニューヒーロー、そして絶対的な強さを見せつけた王者たちが、1年後のパリで再び世界の頂点をかけて激突する。
そして、その道は2025年の東京へと続いている 。ブダペストでの歴史的快挙によって得た大きな自信と勢いを胸に、日本代表チームは34年ぶりとなる自国開催の世界選手権に臨む。特に、現役の世界女王として母国のファンの前に立つ北口榛花の存在は、日本中を熱狂させるだろう。ブダペストの熱狂は、次なる舞台への期待感を最高潮に高め、女王の物語は東京で新たな章を迎える。
付録:日本代表選手 全成績一覧
ブダペスト2023における日本代表選手の全成績
男子
選手名 | 種目 | ラウンド | 結果 | 最終順位 |
サニブラウン・A・ハキーム | 100m | 決勝 | 10.04 (0.0) | 6位 |
準決勝 | 9.97 (+0.3) | – | ||
予選 | 10.07 (−0.4) | – | ||
坂井 隆一郎 | 100m | 予選 | 10.22 (−0.4) | 30位 |
栁田 大輝 | 100m | 準決勝 | 10.14 (0.0) | 22位 |
予選 | 10.20 (−0.1) | – | ||
鵜澤 飛羽 | 200m | 準決勝 | 20.33 (−0.4) | 15位 |
予選 | 20.34 (−0.2) | – | ||
上山 紘輝 | 200m | 予選 | 20.66 (−0.2) | 33位 |
飯塚 翔太 | 200m | 準決勝 | 20.54 (−0.1) | 21位 |
予選 | 20.27 (0.0) | – | ||
佐藤 拳太郎 | 400m | 準決勝 | 44.99 | 14位 |
予選 | 44.77 (日本新) | – | ||
中島 佑気ジョセフ | 400m | 準決勝 | 45.04 | 10位 |
予選 | 45.15 | – | ||
佐藤 風雅 | 400m | 準決勝 | 44.88 | 9位 |
予選 | 44.97 | – | ||
塩尻 和也 | 5000m | 予選 | 13:51.00 | 35位 |
遠藤 日向 | 5000m | 予選 | 13:50.49 | 34位 |
田澤 廉 | 10000m | 決勝 | 28:25.85 | 15位 |
泉谷 駿介 | 110mH | 決勝 | 13.19 (0.0) | 5位 |
準決勝 | 13.16 (−0.2) | – | ||
予選 | 13.33 (+0.5) | – | ||
高山 峻野 | 110mH | 準決勝 | 13.34 (−0.1) | 15位 |
予選 | 13.35 (−0.9) | – | ||
横地 大雅 | 110mH | 準決勝 | 14.93 (−0.2) | 24位 |
予選 | 14.39 (0.0) | – | ||
児玉 悠作 | 400mH | 予選 | 50.18 | 35位 |
黒川 和樹 | 400mH | 準決勝 | 48.58 | 11位 |
予選 | 48.71 | – | ||
岸本 鷹幸 | 400mH | 予選 | 50.90 | 39位 |
三浦 龍司 | 3000mSC | 決勝 | 8:13.70 | 6位 |
予選 | 8:18.73 | – | ||
青木 涼真 | 3000mSC | 決勝 | 8:24.77 | 14位 |
予選 | 8:20.54 | – | ||
砂田 晟弥 | 3000mSC | 予選 | 8:38.59 | 33位 |
柄澤 智哉 | 棒高跳 | 予選 | NM | – |
赤松 諒一 | 走高跳 | 決勝 | 2.25m | 8位 |
予選 | 2.28m | – | ||
真野 友博 | 走高跳 | 予選 | 2.18m | 31位 |
長谷川 直人 | 走高跳 | 予選 | 2.25m | 18位 |
橋岡 優輝 | 走幅跳 | 予選 | 7.94m (−0.2) | 17位 |
城山 正太郎 | 走幅跳 | 予選 | 7.46m (−0.8) | 32位 |
吉田 弘道 | 走幅跳 | 予選 | 7.60m (+1.2) | 28位 |
池畠 旭佳瑠 | 三段跳 | 予選 | 16.40m (−0.1) | 19位 |
ディーン 元気 | やり投 | 予選 | 79.21m | 14位 |
﨑山 雄太 | やり投 | 予選 | NM | – |
小椋 健司 | やり投 | 予選 | 76.65m | 22位 |
丸山 優真 | 十種競技 | 決勝 | 7844点 (自己新) | 15位 |
古賀 友太 | 20km競歩 | 決勝 | 1:19:02 | 12位 |
池田 向希 | 20km競歩 | 決勝 | 1:19:44 | 15位 |
高橋 英輝 | 20km競歩 | 決勝 | 1:20:25 | 21位 |
山西 利和 | 20km競歩 | 決勝 | 1:21:39 | 24位 |
川野 将虎 | 35km競歩 | 決勝 | 2:25:12 | 3位 |
野田 明宏 | 35km競歩 | 決勝 | 2:25:50 | 6位 |
丸尾 知司 | 35km競歩 | 決勝 | 2:29:52 | 13位 |
山下 一貴 | マラソン | 決勝 | 2:11:19 | 12位 |
其田 健也 | マラソン | 決勝 | 2:16:40 | 35位 |
西山 和弥 | マラソン | 決勝 | 2:17:41 | 42位 |
日本チーム | 4x100mR | 決勝 | 37.83 | 5位 |
予選 | 37.71 | – | ||
日本チーム | 4x400mR | 予選 | 3:00.39 | 10位 |
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女子
選手名 | 種目 | ラウンド | 結果 | 最終順位 |
君嶋 愛梨沙 | 100m | 予選 | 11.73 (+0.2) | 48位 |
鶴田 玲美 | 200m | 予選 | 23.49 (−0.3) | 37位 |
田中 希実 | 1500m | 準決勝 | 4:06.71 | 24位 |
予選 | 4:04.36 | – | ||
後藤 夢 | 1500m | 予選 | 4:10.22 | 47位 |
田中 希実 | 5000m | 決勝 | 14:58.99 | 8位 |
予選 | 14:37.98 (日本新) | – | ||
廣中 璃梨佳 | 5000m | 予選 | 15:11.16 | 22位 |
山本 有真 | 5000m | 予選 | 16:05.57 | 38位 |
廣中 璃梨佳 | 10000m | 決勝 | 31:35.12 | 7位 |
五島 莉乃 | 10000m | 決勝 | 33:20.38 | 20位 |
田中 佑美 | 100mH | 予選 | 13.12 (+0.4) | 33位 |
寺田 明日香 | 100mH | 予選 | 13.15 (+0.1) | 34位 |
青木 益未 | 100mH | 予選 | 13.26 (+0.1) | 38位 |
山本 亜美 | 400mH | 予選 | 57.76 | 37位 |
宇都宮 絵莉 | 400mH | 予選 | 57.98 | 38位 |
秦 澄美鈴 | 走幅跳 | 予選 | 6.41m (−0.8) | 23位 |
森本 麻里子 | 三段跳 | 予選 | 13.64m (−0.3) | 26位 |
髙島 真織子 | 三段跳 | 予選 | 13.34m (−0.3) | 34位 |
北口 榛花 | やり投 | 決勝 | 66.73m | 1位 |
予選 | 63.27m | – | ||
斉藤 真理菜 | やり投 | 予選 | 58.95m | 15位 |
上田 百寧 | やり投 | 予選 | 56.19m | 21位 |
齋藤 真希 | 円盤投 | 予選 | 53.20m | 36位 |
藤井 菜々子 | 20km競歩 | 決勝 | 1:30:10 | 14位 |
柳井 綾音 | 20km競歩 | 決勝 | 1:34:59 | 30位 |
梅野 倖子 | 20km競歩 | 決勝 | 1:36:52 | 35位 |
園田 世玲奈 | 35km競歩 | 決勝 | 2:46:32 | 7位 |
渕瀬 真寿美 | 35km競歩 | 決勝 | 2:52:57 | 14位 |
岡田 久美子 | 35km競歩 | 決勝 | DNS | – |
松田 瑞生 | マラソン | 決勝 | 2:29:15 | 13位 |
加世田 梨花 | マラソン | 決勝 | 2:31:53 | 19位 |
佐藤 早也伽 | マラソン | 決勝 | 2:31:57 | 20位 |