【2025年ダイヤモンドリーグ】厦門大会(4月26日)ハイライト:世界最高記録や世界トップ級の結果が続出

【2025年ダイヤモンドリーグ】厦門大会(4月26日)ハイライト:世界最高記録や世界トップ級の結果が続出

2025年ワールドアスレチックス・ダイヤモンドリーグの開幕戦が4月26日、中国福建省厦門(アモイ)市のエグレットスタジアムで開催されました。

男子300mハードルではカールステン・ウォーホルム(ノルウェー)が世界最高記録を樹立し、女子1000mではフェイス・キペゴン(ケニア)が世界記録に迫る快走を見せました。他にも複数の種目で大会新記録や今季世界最高となる好記録が続出し、大観衆を沸かせるハイレベルな戦いで2025年シーズンの幕が華々しく開けました。

ウォーホルムが男子300mハードルで世界最高記録を樹立

男子400mハードル世界記録保持者のカールステン・ウォーホルムが、普段はあまり実施されない300mハードルで圧巻の走りを見せました。ウォーホルムは33秒05の驚異的タイムで優勝し、従来の世界最高記録(33秒26)を大幅に更新しました。2位に入ったマテウス・リマ(ブラジル)に0.93秒差をつける圧勝で、自身の持つ世界最高を塗り替えています。

レース後には「最後のカーブでも脚が驚くほど楽に感じるほど、非常に良いレースだった」と語り、シーズン序盤から仕上がりの良さに手応えを示しました。

キペゴンが女子1000mで世界記録に肉薄

女子中距離界の女王フェイス・キペゴンが、今季初戦から圧倒的な走りを披露しました。

キペゴンは2分29秒21の大会新・今季世界最高タイムで優勝し、女子1000m世界記録(2分28秒98)にわずか0.23秒差と肉薄しました。2位にはオーストラリアのアビー・コールドウェル(2分32秒94)が入り、このタイムはオーストラリア新記録となりました。3位もオーストラリアのサラ・ビリングス(2分33秒45)で、上位3名が充実の記録をマークしています。

キペゴン本人も「自己ベストが出せて世界記録に近づけたのは、とても良いシーズンのスタートになった」と満足気に振り返りました。

短距離種目:女子200m大会新、男子100mは9秒台決着

女子200mでは、米国のアナビア・バトル22秒41の大会新記録で優勝し、世界チャンピオンであるジャマイカのシェリカ・ジャクソンは22秒79の2位に敗れました。3位には米国のジェナ・プランディーニ(22秒97)が入りました。バトルは「200mは今季初レースでとても緊張したが、ここで走れて良かった」とコメントし、大舞台で強豪を下した喜びを語っています。

男子100mでは、南アフリカのアカニ・シンビネが9秒99(+0.2m)の好タイムで制し、ケニアのフェルディナンド・オマニャラ(10秒13)とイギリスのジェレマイア・アズ(10秒17)が続きました。シンビネはレース後半で僅かにバランスを崩しながらも立て直し、シーズン開幕戦から9秒台をマークして健在ぶりを示しています(※追い風参考)。

ハードル種目:男子110mHでティンチ台頭、女子100mHはウィリアムズ優勝

男子110mハードルでは、米国の新鋭コーデル・ティンチ13秒06(+0.3)をマークし、この種目の今季世界最高記録で優勝しました。日本勢トップの村竹ラシッドが13秒14を記録して2位に食い込み、地元ファンを沸かせています。なお、東京五輪金メダリストで世界選手権覇者のグラント・ホロウェイ(米国)は13秒72の10位と大きく出遅れました。

女子100mハードルでは、2015年世界王者で昨年世界選手権も制したダニエル・ウィリアムズ(ジャマイカ)が12秒53(-0.2)で優勝し、2位に米国のグレイス・スターク(12秒58)、3位に南アフリカのマリオネ・フーリエ(12秒62)が入りました。世界記録保持者のトビ・アムサン(ナイジェリア)は12秒74で4位に終わり、昨年の覇者ウィリアムズが強豪ひしめく戦いを制しています。

中長距離種目:女子5000mと男子3000m障害でハイレベル決着

女子5000mはオリンピック金メダリストのビアトリス・チェベット(ケニア)が圧巻のラストスパートを繰り出し、14分27秒12の大会新・今季世界最高記録で優勝しました。エチオピアの強豪グダフ・ツェガイが14分28秒80で2位、同じくエチオピアの新星ビルケ・ハイロムが14分29秒29で3位と続き、上位は歴史的に見ても屈指の高速決着となりました。チェベットは「自分のスピードがまだ健在で嬉しい。コンディションが整えば世界記録も狙いたい」と語り、さらなる高みを目指す意欲を見せています。

男子3000m障害では、エチオピア期待のサムエル・ファイルウ8分05秒61の大会新・今季世界最高で初優勝を飾りました。東京五輪および世界選手権覇者のスーフィアン・エルバッカリ(モロッコ)は8分06秒66の2位に敗れ、3位にはケニアのサイモン・キプロップ・ケーネチ(8分07秒12)が入りました。世界王者エルバッカリを破る番狂わせを演じたファイルウは、終盤までオリンピック王者に食らいつき、世界トップクラスの実力を示しています。

跳躍種目:デュプランティス貫禄勝利、高跳でマフチフ開幕V

男子棒高跳では、“モンド”の愛称で知られる世界記録保持者アルマンド・デュプランティス(スウェーデン)が5m92を一発で成功させ、順当に優勝しました。デュプランティスは当日風に苦しめられながらも6m01に挑戦しましたが、この日は3回ともバーを越えられませんでした。2位にはエマヌエル・カラリス(ギリシャ)が5m82で入り、3位はメンノ・フルーン(オランダ)で同じく5m82でした。

女子走高跳では、ウクライナのヤロスラヴァ・マフチフが1m97を一回でクリアして優勝し、シーズン開幕戦を白星で飾りました。マフチフはその後2m03にも果敢に挑みましたが、惜しくも3回とも失敗に終わっています。2位は東京五輪金メダリストのエレノア・パターソン(オーストラリア)で同じく1m97(※試技差)、3位には東京五輪銀メダリストのニコラ・オリスラーガーズ(オーストラリア)が1m94で続きました世界女王のマフチフが五輪メダリストたちとの競り合いを制し、充実のスタートを切っています。

男子走幅跳では、地元中国の張明坤(チャン・ミンクン)が8m18の好跳躍で優勝し、オーストラリアのリアム・アドコック(8m15)と米国のマーキス・デンディ(8m10)を僅差で退けました。昨年の世界選手権覇者であるジャマイカのタージャイ・ゲイルは8位(7m90)に終わり、中国勢の活躍が際立つ結果となりました。

投てき種目:オールマン圧巻のディスク、シルダーが砲丸で大会新

女子円盤投では、オリンピック2大会連続金メダリストのヴァラリー・オールマン(米国)が68m95を投げて貫禄の優勝を飾りました。2位には東京五輪覇者のヤイメ・ペレス(キューバ)が66m26で入り、3位は昨年の世界チャンピオンであるラウラウガ・タウサガ(米国)の64m91でした。世界トップクラスの選手たちが実力通り上位を占める結果となっています。

女子砲丸投では、ジェシカ・シルダー(オランダ)が20m47の大会新記録を樹立して優勝し、米国のチェイス・ジャクソン(旧姓イーリー)が20m31で2位に入りました。3位には地元中国の鞏立姣(ゴン・リジャオ)が19m62で入っています。シルダーは自己ベストを更新する20m超えをシーズン開幕戦からマークし、世界屈指の実力者であることを示しました。五輪・世界王者のオールマンと並び、この種目でも東京世界選手権の優勝争いに絡む存在と言えるでしょう。

東京2025世界選手権に向けて

今回の厦門大会で卓越した成績を収めた選手たちは、今年9月13日から東京の国立競技場で開催される世界陸上2025(世界選手権)でも有力な優勝候補となります。

男子400mハードルのカールステン・ウォーホルムは東京で自身4度目の世界タイトル獲得を狙っており、今季序盤から全開の走りでライバルに大きな差を見せつけました。女子中距離界のフェイス・キペゴンは1500mと5000mの世界記録保持者として世界選手権でも中心的存在で、東京大会でも複数種目での金メダルを視野に入れています。男子棒高跳ではアルマンド・デュプランティスが既にオリンピック・世界選手権を制してきた絶対王者であり、東京でも自身の世界記録更新を含め圧倒的な活躍が期待されます。

女子走高跳ではヤロスラヴァ・マフチフが昨年の世界王者として連覇を目指し、東京五輪金メダリストのエレノア・パターソンや銀メダリストのニコラ・オリスラーガーズとの再戦が注目されます。女子100mハードルではダニエル・ウィリアムズが世界女王の座を守るべく挑み、男子100mではアカニ・シンビネやフェルディナンド・オマニャラらアフリカ勢が世界の表彰台を狙います。

女子短距離ではシェリカ・ジャクソンが200m2連覇を、男子3000m障害ではスーフィアン・エルバッカリが連覇を目指しますが、新星サムエル・ファイルウら台頭著しい選手との激戦が予想されます。また、女子円盤投のヴァラリー・オールマン(二度の五輪金メダル)や女子砲丸投のチェイス・ジャクソン(世界選手権2連覇中)は、それぞれ東京で世界タイトルを狙う最有力選手です。

厦門で幕を開けたダイヤモンドリーグ2025のハイレベルな戦いは、秋の世界陸上東京大会への期待を一層高めるものとなりました。世界のトップアスリート達が再び東京に集い、熱戦を繰り広げる日が待ち遠しいですね。